創業の心 VOL.4 松下幸之助 発展への礎

創業の心 VOL.4 松下幸之助 発展への礎 PHP研究所 2011



 勤め先の会社の社長が、突然貸してくれた。



 松下幸之助氏が経営理念を実際の経営の中でどの様に打ち出し、どの様な効果があったか、という事がパナソニック社の歴史にもふれつつ書いてある。



 松下幸之助氏の生い立ちや経歴については、もともと良く知らなかった。いつか勉強したい、とは思っていたが、そのいつかが不意にやって来た。なーんか退屈そうだな、でも社長に勧められたから読まない訳には行かないし、ぐらいの気持ちで読んでみたが、かなり気づかせられるポイント満載の、濃い内容であった。



 私の前職はいわゆるバリッバリのITベンチャー企業だったのだが、そこの社長は、企業理念だとか、クレドだとか、やり過ぎだと思えるほど繰り返し全社員に対して強調し、浸透させる事に力を注いでいた。そのやり方で、実際に業績も順調に伸びていた。



 その順調な業績は予め計画された事業計画の達成から来るもので、その計画は理念やクレドの方向性からブレないものだった。そして、計画はバランス・スコアカードの手法により個々人の業務の課題のレベルまでブレイクダウンされると共に、計画の全体像については経営方針発表会や毎月開催される全社集会などで末端の社員にまで共有されていた。



 そんな会社を経験していたからこそ、本を読み終えた今、内容がよく浸透して来るのだろう。前職の社長は滅茶苦茶勉強熱心な人だったから、きっとこういう松下幸之助氏の手法なんかも、随分研究したんだろうなあ、なんて事も思えて来る。やっぱり、自分自身は勉強量が圧倒的に足りないし、内容的にもあらゆる事を勉強しなくてはいけないな、と痛感した。



 そんなパナソニックだが、よくよく歴史を見てみると、現在ベンチャー企業と呼ばれている会社との共通点が多い事に気付く。いや、ベンチャー企業という言葉が後から生まれたのであって、きっと現代でいうベンチャー企業だったのだろう。



 松下幸之助氏は23歳という若さで独立した。3月に自宅の一部で夫婦と義理の弟だけで創立したのが年末には従業員20名になっていたという。雇った社員達の殆どが自分より若かったというから、若者の集団である。年商220億円の頃、5年で売上を4倍にしよう、なんて計画を立てて達成した事もあるらしい。当時としては、いや、現代でもそうかも知れないが、相当ブッ飛んだ、新進気鋭の経営者であったに違いない。



 やはり、ブッ飛んでいるから不安だ、と凡人はついつい思ってしまいがちなのかも知れないが、そうではないという事だ。そして、それは現代の話だけではなく、昔からそうだったという話だ。従来の方法からすればブッ飛んではいるけれど、理屈や方法論がしっかりしているから安心だ、逆にその辺りがしっかりしていなければ、何となく手堅そうな行動を取っていても安全だという保障はありませんよ、という事だ。



 もっともっと勉強して、売上の拡大に向けた整備を早急に進めねば。