「エスキモーに氷を売る」ジョン・スポールストラ
「エスキモーに氷を売る」 ジョン・スポールストラ きこ書房 2000
著者が「ジャンプ・スタート・マーケティング」と呼ぶマーケティング手法について、主にNBAのプロバスケットボールチームを題材に解説した本だ。タイトルにあるエスキモーについての解説は無い。バスケットボールの他に、砂の中の硬貨を見つける装置や、フォードの自動車なども少しばかり登場する。
「ジャンプ・スタート・マーケティング」というのは一言で「こんなもの」といえるものではなく、マーケティング出身の経営者である著者が業績向上に向けたいくつかの鉄則の集合、みたいなものだ。マーケティングに関するものがほとんどだが、組織の改革みたいなものも一部混ざっている。
顧客リストの使い方や見込み客リストの使い方、費用対効果の考え方などを始め、言われてみれば難しい話ではないごくごく基本的な事柄が、それも極めて実践的な話を例にして書いてある。
そんな基本的だ、当たり前だと思う事でも、それじゃあそれを自分の会社の業務にもすぐに採り入れてみましょう、という事ができるかというと、なかなか億劫である。ほとんどの人にはできない。チャレンジしようとなんてしない。その億劫さを乗り越えてまでチャレンジできる人の行動力というのは、人並みからははずれていて、もっと強力なものなのだ。そのうえ、中途半端に年齢を重ねてしまっている自分は、やってみる前から色々な厄介事や難しさなんかをまず最初に想像してしまい、それらがあっという間に頭の中を駆け巡る。他の部分は衰えても、心の中を吹き荒れる臆病風の風速ばかりは年々パワーアップしている様に感じる。しかし、辛辣で皮肉たっぷりなこの本の文章を読んでいれば、なんだか楽しくなって来て、自分も行動力を発揮して一丁やってみたいなんて気持ちにもなれる。読んで良かった。
読み物としても面白いので、職場の同僚の多くにも、薦めてみたい一冊だ。
![Amazon.co.jp<br><br /><br><br />( なかなかおもしろいタイトルだが、その内容は営業のノウハウというよりは、マーケティングよりである。 <p> 著者のジョン・スポールストラは、NBA(全米バスケットボール協会)で観客動員数最下位だったニュージャージー・ネッツを、27球団中チケット収入伸び率1位にまで導いた人物である。本書の魅力は、このスポーツビジネスを通して彼が商品を売るためにとった数々のマーケティング手法を、そのドキュメンタリーのなかで学ぶことができるところにある。 <p> 彼の成功は確かに驚異的であるが、そのマーケティング手法はおおかたマーケティングの基本に沿ったもので、際立って目新しいものはないだろう。注目すべきは、与えられたビジネス条件を徹底的に分析し、持てる資源を最大限に生かしたその戦略であり、どんな小さな材料も効果的に利用したことである。とかくマーケティングというと企業は多額の予算を使った大きな戦略をとりたがるものだが、彼は大きな広告をうつよりも、時には顧客それぞれに直接アプローチする方が効果的なことを知っていた。 <p> また彼は「売れる企業」にするために、「投資」や「改革」を阻む財務屋体質の経営者、企業からの脱却を訴え、マーケティングを最優先させる企業の在り方を説く。「ミスにボーナスを出す」「経営が厳しくなったらセールススタッフを増やせ」など一見突飛とも思えるアイデアも登場するが、その根拠には読み手を納得させるだけのものがある。 <p> 戦略においても、企業改革においても、人間の心理をついた鋭い状況判断、「変化」を恐れない彼のマーケティング体験からはビジネスマンとして学ぶことが多い。読み進めていくうちに彼のマーケティングにかけるエネルギーが伝わり心地よい充実感に包まれることだろう。(大角智美))<br><br /> エスキモーに氷を売る―魅力のない商品を、いかにセールスするか [単行本] / ジョン スポールストラ (著); Jon Spoelstra (原著); 中道 暁子 (翻訳); きこ書房 (刊)](https://ecx.images-amazon.com/images/I/51H0CEWCPBL._SL160_.jpg)
エスキモーに氷を売る―魅力のない商品を、いかにセールスするか [単行本] / ジョン スポール...
著者が「ジャンプ・スタート・マーケティング」と呼ぶマーケティング手法について、主にNBAのプロバスケットボールチームを題材に解説した本だ。タイトルにあるエスキモーについての解説は無い。バスケットボールの他に、砂の中の硬貨を見つける装置や、フォードの自動車なども少しばかり登場する。
「ジャンプ・スタート・マーケティング」というのは一言で「こんなもの」といえるものではなく、マーケティング出身の経営者である著者が業績向上に向けたいくつかの鉄則の集合、みたいなものだ。マーケティングに関するものがほとんどだが、組織の改革みたいなものも一部混ざっている。
顧客リストの使い方や見込み客リストの使い方、費用対効果の考え方などを始め、言われてみれば難しい話ではないごくごく基本的な事柄が、それも極めて実践的な話を例にして書いてある。
そんな基本的だ、当たり前だと思う事でも、それじゃあそれを自分の会社の業務にもすぐに採り入れてみましょう、という事ができるかというと、なかなか億劫である。ほとんどの人にはできない。チャレンジしようとなんてしない。その億劫さを乗り越えてまでチャレンジできる人の行動力というのは、人並みからははずれていて、もっと強力なものなのだ。そのうえ、中途半端に年齢を重ねてしまっている自分は、やってみる前から色々な厄介事や難しさなんかをまず最初に想像してしまい、それらがあっという間に頭の中を駆け巡る。他の部分は衰えても、心の中を吹き荒れる臆病風の風速ばかりは年々パワーアップしている様に感じる。しかし、辛辣で皮肉たっぷりなこの本の文章を読んでいれば、なんだか楽しくなって来て、自分も行動力を発揮して一丁やってみたいなんて気持ちにもなれる。読んで良かった。
読み物としても面白いので、職場の同僚の多くにも、薦めてみたい一冊だ。
![Amazon.co.jp<br><br /><br><br />( なかなかおもしろいタイトルだが、その内容は営業のノウハウというよりは、マーケティングよりである。 <p> 著者のジョン・スポールストラは、NBA(全米バスケットボール協会)で観客動員数最下位だったニュージャージー・ネッツを、27球団中チケット収入伸び率1位にまで導いた人物である。本書の魅力は、このスポーツビジネスを通して彼が商品を売るためにとった数々のマーケティング手法を、そのドキュメンタリーのなかで学ぶことができるところにある。 <p> 彼の成功は確かに驚異的であるが、そのマーケティング手法はおおかたマーケティングの基本に沿ったもので、際立って目新しいものはないだろう。注目すべきは、与えられたビジネス条件を徹底的に分析し、持てる資源を最大限に生かしたその戦略であり、どんな小さな材料も効果的に利用したことである。とかくマーケティングというと企業は多額の予算を使った大きな戦略をとりたがるものだが、彼は大きな広告をうつよりも、時には顧客それぞれに直接アプローチする方が効果的なことを知っていた。 <p> また彼は「売れる企業」にするために、「投資」や「改革」を阻む財務屋体質の経営者、企業からの脱却を訴え、マーケティングを最優先させる企業の在り方を説く。「ミスにボーナスを出す」「経営が厳しくなったらセールススタッフを増やせ」など一見突飛とも思えるアイデアも登場するが、その根拠には読み手を納得させるだけのものがある。 <p> 戦略においても、企業改革においても、人間の心理をついた鋭い状況判断、「変化」を恐れない彼のマーケティング体験からはビジネスマンとして学ぶことが多い。読み進めていくうちに彼のマーケティングにかけるエネルギーが伝わり心地よい充実感に包まれることだろう。(大角智美))<br><br /> エスキモーに氷を売る―魅力のない商品を、いかにセールスするか [単行本] / ジョン スポールストラ (著); Jon Spoelstra (原著); 中道 暁子 (翻訳); きこ書房 (刊)](https://ecx.images-amazon.com/images/I/51H0CEWCPBL._SL160_.jpg)
エスキモーに氷を売る―魅力のない商品を、いかにセールスするか [単行本] / ジョン スポール...