年賀状をやめた(文例つき)

2017年の年賀状(2016年末に発送)を最後に年賀状をやめた


年賀状はすでにその役目を終えた

2017年の年賀状(2016年の年末に準備した分)限りで、私は紙の年賀状を出すのをやめた。その最後の年の年賀状には「今回限りで年賀状はもう紙の年賀状はもう送りません」という趣旨の事を全員宛に印刷して送った。

結果的に、やめた事が私にとっては良い事だった。ただ、人それぞれの事情や物の感じ方があると思うので、誰もがそうした方が良いとはあまり思わない。

とりあえずここに実際に年賀状をやめた人間がひとり居るので、やめた後の現在の気持ちだとか、ちょっとした体験談をここに書いてみた。年賀状をやめようかどうしようかで迷っている人の参考に役立てばうれしい。

送るのをやめた時、お互いの本当の気持ちは?

私は年賀状をやめた最後の年、特に前もってやめると計画してはいなかった。2016年の年末が近づいた頃の事だ。特に何も考えもせず、毎年の習慣通りに半ば惰性で郵便局に行き年賀はがきを買った。パソコンに向かい、どんな年賀状にしようかな、なんて準備を始めた。そうしながら、ふと思った。年賀状を送るというのは、本当に相手の人を喜ばせるのだろうか?逆に送らないというのは、悪い気持ちにさせる事なのか?

年賀状の準備から開放されてスマホを見る人たしかに年賀状もかつては、めったに会う機会の無い人に対する年に一度の近況報告だとか、あなたの事を気にかけていますよという気持ちを示すツールとして大事な役割を果たしていたと思う。しかし今はSNS上で、ライブ感たっぷりな写真の説明付きで、何なら動画まで付けてお互いに近況報告をして、タイムリーなコミュニケーションが年がら年中できてしまっているではないか。

 自分の年賀状の宛先リストを眺めてみれば、そこに載っているのはSNSでお互いフォローし合っている人か、そうでなければ仕事でしょっちゅう顔を合わせている人ばかりだ。

結局、ここ最近の年賀状は本当に必要があってやり取りしている訳ではなかったのだ。やりとりを無くしたところで実質的に何かが変わるとも思えないし、かえってお互いの煩わしさが減って良いのではないか。新しいコミュニケーションツールが次々と生み出されてきた中で、どうやらハガキの年賀状はもうすっかり形骸化して実質的な意味がなくなってきたようだ。今年限りでやめてしまおうか。私はそう考え始めた。

年賀状をやめるのは非常識と取られないか?

さて、そう思ってはみても、私はそもそもマナーやしきたりへの知見に自信がない。思い付きで行動して、あとで後悔するような失敗も多く経験してきた。年賀状には自分の知らない大事な役割だとかタブーだとかも存在するのかも知れない。自分が想像できない何かで、相手の人に嫌な思いをさせるのもまずいと思い、確認のためにネットで色々調べてみた。人からいい人だと思われたい訳ではないが、もういい歳なので、ちょっとした手間を惜しんで、新年の始まりから知り合いに嫌な思いをさせたりしたくはない。

結果を先に言うと、やめたら大きな問題になるという情報は見つからなかった。調べてみて分かったのは次のような事だった。

  • テレビ等に出演している著名な文化人にも、すでにやめている人がけっこう居る
  • やめた人の体験談は、やめても特に不都合は生じなかったというものばかりである
  • サラリーマンなどで、同調圧力が特別強い職場だと、送り続けたほうが良い場合もあるので、自分自身の置かれている環境、特に経営者や上司の考えや意見については慎重に確認しておくべき。
  • 年賀状の風習が始まったのは19世紀末に郵便ハガキのサービスがスタートしてからだと言われており、伝統だとか、文化とまでは言い難いぐらいのビミョーな歴史だった
  • 年賀状の発行枚数は2000年台の前半をピークに減少を始め、直近ではピーク時のおよそ2/3程度にまで減少し、年賀状をやめる社会的な動きはすでに結構進行していた。
  • いきなり発送をやめるのでなく、「私はもう年賀状をやめます」という事を伝えておいた方が、相手を心配させる事がなく、好ましい
こんな事が分かった。そういう事ならば、さっそく自分もちゃんと段取りをして、今年限りで年賀状を送るのをやめよう。

ニュースにならない「年賀状をやめる流行」がある

さて、この様にやめると決めた私だが、統計的に見ればそんな私も特別珍しい存在なわけではなさそうだ。上に書いた通り、年賀はがきの発行枚数は10年そこそこの年数でピークから2/3ぐらいにまで一気に減ってきたという。わが国の人口の減少だとか、そういう事の影響もあるにはあるだろうが、どう見てもこの減少のペースはそれよりずっと急激だ。かつて年賀状を送っていた人が送るのをやめたという、行動や態度の移ろいを認めざるを得まい。しかも結構なペースだ。ものすごく単純に考えれば、10年で2/3になったのだから、もう20年経てば送る人はゼロだ。実際にはそこまで単純ではないだろうが、今まさに減っている事は確かだし、減り方もゆっくりではない。

言われてみれば、年賀状以外の郵便だって、使う頻度は減っているのだ。例えば仕事上で書類のやり取りをする場合なんかでも、印刷物を封書にして送る代わりに、PDFやJPEGにしてeメールで送受信をする機会がすっかり多くなった。郵便全体の利用が減っているのだから、年賀状の利用だってそりゃ減るだろう。減り方のペースが想像より早いという驚きはあるものの、減る事自体には納得感がある。

ところで、一般的に、新しいものが流行り始める時や、流行っている全盛期にはニュースでよく報道される。 逆に、流行が衰退していく場合はあまり報道されない。なので、特別に興味があって自分から調べてみたりなどしない限り、流行の衰退にはなかなか気が付かないものだ。思えば、ミニディスクだとか、ミクシイだとか、セカンドライフだとか、ネットブックだとか、たまごっちだとか、大流行したのちに結構急速に人々の需要が減って行ったものは色々ある。それらの需要の減り方を、メディアがいちいち伝えていただろうか。ニュースにすらならず、人知れず需要や人気が衰えて行ったのだ。年賀状はきっと今まさにそれだ。メディアに取り上げられること無く「やめるブーム」の真っ只中なのだろう。

実際にどう書いて送ったのか(文例あり)

私はその最後の年賀状を送るに当たり、「今年限りでやめます」という趣旨の事を書いて、それまで例年送っていた人々に送った。実際に書いた文面そのままを書くと次の通りだ。 
明けましておめでとうございます

本年もよろしくお願いいたします。2017年がどうか素敵な年になりますように。
ところで、今日の各種通信メディアの日常的な利用状況から、本年分をもちましてどなた様へも紙の年賀状の郵送を終了することとさせていただきました。
今後とも引き続き、Eメールや各種SNSなどの電子メディアでどうぞ末永くよろしくお願いいたします。まだ電子メディアでのご連絡先を伺っていないかたは、ぜひお知らせください。
私の連絡先はこちらです: Eメール xxxx@xxxx LINE ID xxxx

文面を作るにあたっては、色々ネットで注意点を調べておいた。それらをまとめるとこうだ。
  • 「私にだけ送るのをやめるのかな」と誤解されないように「どの人へも」という意味の事を書く
  • 多くの人に同じ内容を伝えている事を強調する為に、手書きっぽいものではなくわざと印刷物らしさ満点のデザインにする
  • なぜ年賀状をやめるのか、という説明を省略せずにきちんと載せる
  • やめる理由は「世の中の流れに従い」とか「皆様から年賀状をやめるというご連絡を多く頂いているので」とか「もう年齢的にきついので」とか「ハガキの調達が困難なので」とか、自分の意志っぽくない理由にする
  • やめる理由には「非効率なので」「無意味なので」「時代遅れなので」等、年賀状を送り続けている人を批判するニュアンスの事は書かない
  • 縁を切りたいのだと受け取られない様に、別の連絡方法で今後もお付き合いを続けましょう、という意味の事を書く
  • 年賀状をやめるという事務的な通知だけで終わらない様、それ以外の「おめでとう」とか「今年もよろしく」とか「よいお年を」の挨拶や近況報告などを忘れずに書く

やめてみた感想

ひとことで言うと、やめて正解だった。誰からも文句を言われたりもしていないし、困った事や、後悔した事はなかった。この記事を書いている今まさに、人気の男性アイドルグループをキャラクターに起用した年賀はがきの売り出しが行われている真っ只中だ。思い出すと、毎年のこの季節の年賀状の準備にはストレスがあった。そのストレスから開放されたこの冬は、自分はちょっと恵まれているかの様な気持ちだ。単純にやめる前とやめた後を比べれば、やめた後のほうがずっと良い。

しかし、反省した事もある。少なくとももう数年は早く、年賀状を送る意味や、年賀状をやめるという事について考える事はできたはずだ。あまり人を喜ばせているように思えず、自分自身だって煩わしいと感じていた年賀状を毎年繰り返し準備していながら、やめた方がいいんじゃないかとか、そういう疑問を持つことすらなかった。自分の生活には、そういう無駄や、惰性で続けている形骸化した習慣が他にもまだあるんじゃないか、と思う。もっと物事に気づいたり、疑問を持ったりする習性を身に着けなくては、と反省した。

 2021年秋の追記──年賀状はピーク時の半分をはるかに下回っている

東京新聞によると、2022年の年賀状の発行用定数は18億3千万枚との事だ。ピークは2003年の約44億6千万枚だったというので、とっくにピーク時の半分を割り込み、4割の少し上ぐらいだ。来年には確実に4割をも下回るだろう。これまで大量に年賀状を送っていた企業が枚数を減らしたり、送るのをやめたりなんて事も考えられるが、ほぼ4割というその数値を聞くと、全方位的に送るのをやめた人が増えたのかな、と思ってしまう。もはや、年賀状を出す人と出さない人の数比較したら、出さない人の人のほうが多数派になってしまっているのかもしれない。年賀状が消える年は思いのほかもうだいぶ近くに迫ってきているのだろう。