[実話] ワンタッチネクタイがバレる時

ワンタッチネクタイはバレるの?バレないの?


始めにまず結論を言ってしまうと、ワンタッチネクタイは少し緩めるだけですぐバレる。しかし決して緩める事なく、いつも上まできっちり締め続けていれば、バレない。ワンタッチネクタイとはそういうものだ。私は実際におよそ10年間にわたって使い続けた。

ネットを検索するとバレないと言い切っている、あるいは言い張っている情報も多い。そして誰にでもおすすめだと。それらの情報は、私に言わせればウソだ。現実の社会では、ネクタイをちょっとぐらい緩めたいという人は多く、実際に街に出ればネクタイを少し緩めている人を多く見かけるが、ワンタッチネクタイでそんな事をしようものならすぐにバレる。

逆に、いつも上まできっちり締めたままずっと過ごしていれば確かにバレないものの、誰もがそうやって過ごしていられるわけではない。それこそが現実の世の中というものだ。

つまり、ワンタッチネクタイは誰にでもおすすめできるものではなく、使う人を選ぶというのが正直な伝え方だ。ワンタッチネクタイに関して記事を書くのはそれを売りたいと考えている立場の人が多い。そういう人はなるべく弱点や欠点に言及したくはなく、良い事ばかりを伝えたいと考えて当然だ。かと言って個人の捉え方だと言われれば、ウソ情報と決めつける訳にもいかない。なので情報を受け取る側が、話半分に受け止めるというか、長所ばかりのアピールをいくらか割り引いて考えるぐらいが、現実的な落とし所だろう。

10年間ワンタッチネクタイを使ったそのきっかけ

私がワンタッチネクタイを愛用していた約10年間というのは、最近の事だ。緩めればバレるという欠点を加味してもなお、総合的にはメリットを感じていた。その10年間に、ワンタッチ式でない普通のネクタイも持ってはいた。しかし使うのはもっぱらワンタッチネクタイばかりで、普通のネクタイを締める事はほとんどなかった。ハマる人には、それぐらいハマるものだ。

ネクタイを締めてビールを飲む人のイラスト

もともと私はワンタッチではない普通のネクタイを締めていた。最初にワンタッチネクタイを使ったきっかけは、飲み仲間を笑わせるためだった。今ではそうでもないが、当時はワンタッチネクタイなんかを使うのはダメな大人、みたいな風潮がけっこうあった。ワンタッチネクタイが持つしょうもないハイテクさとなんとも言えないダサさには、人を笑わせるポテンシャルがあると私は目を付けた。そしてお決まりの1本を、もっぱら飲みに行く日にだけ、余興のために締めていた。ある程度酒が回ったタイミングで「実は私のネクタイこんなやつなんですよー」と見せながらカミングアウトすると、実際に結構笑いが取れたものだ。今考えると、普段ならスベっているレベルなのに、酔っ払っているおかげでウケただけなのかも知れない。


ある朝私は、出勤の支度をもたもたしていて、通勤電車に間に合うかどうかの、ギリギリの状況になってしまった。その時、とっさの判断で余興用のワンタッチネクタイを手にして首周りに締めた。ネクタイを締める動作は一瞬で完了し、そこで浮いた時間のおかげでいつもの電車に間に合った。いつも通り職場に到着し、いつも通りに仕事を始めた。その日はいつもよりも忙しく、無我夢中で仕事を片付けて退社した。家に帰り着いてネクタイを外す時にようやく、「そういえば今日はこのワンタッチ式のネクタイだったんだな」と思い出した。一日を通して、何の違和感も感じなかった。周りの人からも何も言われなかった。きっと誰にもバレていない。

その時に思った。毎日これを使ったらいいんじゃないかと。その次にネクタイを買う時には、ワンタッチネクタイを買った。私の持っているネクタイには1本、また1本と次第にワンタッチネクタイが増えて行き、その一方で、めんどくさい普通のネクタイを敬遠するようになっていった。そしてついにワンタッチネクタイだけで毎日のローテーションを組むまでになった。

ワンタッチネクタイはどのようにバレるか

ところで、最初に、緩めればバレると書いた。ではなぜ緩めるとバレるのか?

それは、ワンタッチネクタイの首に巻きつける部分が、ふつうのネクタイとは明らかに違う、細い紐でできたペンダントみたいになっているからだ。単なる紐の場合もあれば、多少バレにくいように、本体部分と同じ生地でくるんである場合もある。くるんではいても、あまりにもその部分がふつうのネクタイに比べて細すぎる。色や模様だけバレにくくしたところで、形がふつうのネクタイとあまりにも違いすぎるせいで結局バレてしまう。ものづくりの詰めが甘いとしか言いようがない。

ワンタッチネクタイのイラスト

では、どの程度緩めたらバレるのか。

ワイシャツの第一ボタンを外してみるだけではどうか。ボタンを外すだけならば、バレずに済む。しかし、その状態から、ネクタイの結び目に相当する部分を下向きに引っ張って緩めてしまうとバレる。そんなに大きく緩めず、ちょっとだけ緩めただけでもバレる。なので私は、緩めてはいけないと、いつも気を遣っていた。ここがまさにワンタッチネクタイの大きな弱点だ。せっかくならば結び目の左右ほんの3-4センチずつの区間だけでも太くしておいてくれさえすればバレる事なく少しだけ緩められて首筋や肩がラクなのに、と思うのだが、そういう製品はこれまでに見かけた事がない。あったらもちろん買いたいし、私以外にも欲しがる人が多いと思うのだが。

この事は結局、私が10年近く愛用したワンタッチネクタイをやめて、ふつうのネクタイに戻るひとつの大きな理由になった。 


ワンタッチネクタイがバレるとヤバいのか?

職場環境によっては、ワンタッチネクタイの使用はリスクを伴う。それがどの程度のヤバさなのかは、職場それぞれで違う。少し考えやすいように、私はバレたときのヤバさのレベルを3つの段階に整理してみた。もし本格的に使い始めるのならば、自分の職場はどうなのかを、あらかじめ見極めておいてから使った方が良いと思う。厄介なことに、社会人の世界にはワンタッチネクタイを毛嫌いする層が少なからず存在している。覚悟ができていればまだしも、何も覚悟ができていない状態で、思いがけず職場で厳しく叱責されたり、大勢の前で恥をかかされるというのは、精神的ダメージが大き過ぎる。

ヤバさレベル1

これは、職場でワンタッチネクタイの着用がOKだと明らかになっている場合だ。たとえバレても、会社から叱られる事はない。ただ、もっぱらパーソナルな部分で、ファッション的にダサい人だとか、色気を失いズボラになり下がってしまった人のような印象ができてしまいかねない。それが嫌な人にとっては、リスクがあるというレベルだ。

因みに、今の私の職場はこの状況だ。

ヤバさレベル2

これは、 明確な規則が無くてワンタッチネクタイの着用がダメだともダメでないともはっきり決まっていない場合だ。

ここでダメかダメでないかの判断を握っているのは一般的に自分の上司か、会社の幹部か、あるいは人事部門だ。彼らがダメと言えばダメになるし、ダメじゃないと言えばダメじゃなくなる。

こういう職場では「ダメですか」と質問してはっきりさせる、というのもひとつの手だが、必ずしもはっきりさせない方が良いという考え方もある。というのも、「ダメ」とはっきり言われていないのであれば、初めてバレた時に「今後はもうダメ」と言われたとしても、そこまで厳しい扱いは受けにくいからだ。いわば執行猶予が付く余地が残っているような感じだ。ダメかダメでないかなどと質問するのは、そんな執行猶予を自ら投げ捨ててしまうようなものだ。

ワンタッチネクタイの是非の判断を握っている人物が、物事に寛容なタイプか、不寛容なタイプかという事は、日頃の様子からだいたいわかっているだろう。気難しく不寛容なタイプならば、ワンタッチネクタイの事など言及すらしてはならない。そういう人にはワンタッチネクタイを嫌う人が多い。しかもただ使用を禁止されるだけでは済まず、評価を下げられたりしつこく嫌われたりする危険もある。とにかくワンタッチネクタイの事など考える機会すら与えないのが利口だろう。

因みに、私がワンタッチネクタイを使い始めた当時は、この状況だった。ひとり密かにワンタッチネクタイを締めた私は、その事を社内でいちばん親しい同僚たちにさえ打ち明ける事なく、ポーカーフェイスで潜伏の毎日を過ごしていた。

ヤバさレベル3

これは、ワンタッチネクタイがダメだという規則があったり、あるいは規則まではなくとも 上司や幹部や人事の人が「ダメ」と明言している場合だ。「ダメ」と言われているのに使っている、という場合だと厳しい処分を受けても仕方がない。もしもこういう状況で隠れて使うとなると、絶対にバレない入念な対策をするとか、バレた時の非常用マニュアルをあらかじめ準備しておくとか、それなりの覚悟や準備が必要だ。

ジワジワ増加するワンタッチネクタイ

ワンタッチネクタイの便利さは、自動車で言うところの、MT車と比べたAT車の便利さみたいなものだと私は思う。ワンタッチネクタイは確かに便利ではあるものの、あらゆる人を満足させる訳ではないだろう。ふつうのネクタイならば、結び方を変えてシェイプを変化させ、シャツやジャケットの襟の開き具合のデザインに合わせて、コーディネートを楽しむ事ができる。そもそもネクタイを結ぶという作業の過程自体に何らかの風情を感じる事もできる。ワンタッチネクタイではそういう粋な楽しみ方はできない。しかしそれと引き換えに、結ぶのにコツも必要なければ失敗もしないし、手間や時間が省けるという、ふつうのネクタイには無い便利さがある。

私が使い始めた頃に比べると、最近のほうがワンタッチネクタイが売られている場所が増えている。今では、大型スーパーの紳士服売り場ではほぼ必ず販売コーナーがある。きっと売れるようになってきたのだろう。考えてみれば、世の中の誰もがみんなファッションに強いこだわりを持っているわけではない。ファッション性よりも便利さを優先して考える人の数はそれなりに多いのではないか。

ワンタッチネクタイは未来のネクタイか

ネクタイの歴史を調べると、もともとはスカーフみたいなものだという。いつしかそれが細長い棒状にあらかじめ縫い合わされたものになった。結び方もパターン化した。薄い布を細長く縫い合わせただけのものから、芯材が入ってさらに結びやすく、コツ不要で丁度よいボリューム感が出るものになった。裏の剣先が横から飛び出さない様に、ループが取り付けられた。

ワンタッチ式でない普通のネクタイだって、こんな風にあちこち変わりながら進化をしてきたのだ。進化する度に、その進化を支持する人もいれば、保守的な価値観の人からは邪道だとか無粋だとかの批判を受けてきた事だろう。きっと賛否両論の中で変化してきたのだ。今日一般的で常識的だと考えられているネクタイだって、むかしのある時期には、進化の最先端を行く、トガった仕様だったはずだ。

ワンタッチネクタイは、ひょっとすると、ネクタイのさらなる進化系なのかも知れない。今は少数派のワンタッチネクタイだが、四半世紀ぐらい先の未来になったら、ネクタイの主流になっていると想像できなくはない。これまで変化を続けてきたネクタイというものが、ここでピタリと変化を止めるとは考えにくいものだ。これからも変化していくと考える方がむしろ自然だ。

さらに、今のわが国には、クールビズだとかウォームビズだとかがきっかけで、ビジネスのドレスコードがなし崩し的にカジュアル化していく流れがある。ネクタイがワンタッチかどうかという話どころか、そもそも締めてすらいない人が増えている。「ノータイでジャケット」とか「ノータイでスーツ」という服装がおかしいと言われる事はなく、当たり前になった。こんな状況になれば、もはやそれがワンタッチ式であれ、わざわざ襟元にネクタイを付けているという時点で、律儀な人、保守的な人、と受け取る人が増えてきているのかなという気もする。

別の面から考えると、ワンタッチネクタイは警備、旅客業、出帳エンジニア、デリバリー、フードサービス、ホテル、施設の案内者、ショップ販売員など、人と接する色々な業種のスーツスタイルやブレザースタイルのユニフォームの分野ではだいぶ前から普及し、社会に定着している。製品化しているメーカーも、採用しているユーザーも、感じのよい身だしなみを実現しようと、真面目な思いでワンタッチネクタイと関わり、普及させているわけだ。そのように真面目にワンタッチネクタイを普及させている多くの人々が居るにもかかわらず、ワンタッチネクタイはフザけているとかナメているという意味の事を言って禁止しているのは、そもそも世間一般に対する配慮を欠いた、個人の価値観のゴリ押しとも取れる。

そしてわが国の社会はだんだんパワハラやカスハラなど、立場の強さを利用したゴリ押しに対し、ダメだという風潮になってきた。これまでのように、会社の偉い人が個人的にワンタッチネクタイを嫌っているからといって、むやみに禁止するような事はだんだんしづらくなって行く方向に向かいつつあるのではないか。 

なぜ私はワンタッチネクタイをやめたのか

私はワンタッチネクタイを10年ほど愛用し、多くのメリットを実感してきた。しかしとうとうそんな私にも、ワンタッチネクタイの着用をやめてふつうのネクタイに戻す日がやってきた。そのきっかけは転職だった。

詳しく説明すると次のような理由だ。

  •  ネクタイが必須でない職場なので ── もしも朝の出勤前の身支度で時間が足りなくなったら、とりあえずノータイのままで出勤すればよく、カバンに入れて持って来たネクタイを職場に着いてから締めれば済み、それほど短時間でネクタイを締める必要がもはやなくなった事に気づいたので。
  •  首が疲れるので ── 第一ボタンを外してネクタイを少し緩めたい時があるが、ワンタッチネクタイでそれをすると見た目がみっともないという問題があり、緩めてもみっともなくない普通のネクタイを締めたくなったので。

転職前は、ドレスコードというきちんとしたものは無かったものの、偉い人が服装に関してうるさく言う職場だった。ブレザーやジャケットスタイルですら許されておらず、スーツを着なくてはならなかった。ワイシャツの第一ボタンをはずしてネクタイをちょっと緩めるなんてできる雰囲気ではなく、そんな事を思いつく余地すらない、重苦しい雰囲気があった。逆説的だが、服装の管理の厳しさが、緩めればバレてしまうというワンタッチネクタイとはかえって相性が良かったのだ。

転職後の職場では、「ビジネスカジュアル」で勤務するとちゃんと就業規則で決めてある。ネクタイは必須ではない。私はそれでも、服装の色味が物足りなく感じるのでネクタイを自主的に身につけている。不思議なもので、これまで毎日ネクタイを緩める事なく上まできっちり締めて続けていた私だというのに、職場環境がいくぶんリラックスした環境に変わったとたん、これまでのようにネクタイを上まできっちり締めている事が苦痛で我慢できなくなってしまった。そんなときにワンタッチネクタイでは恥ずかしい。細いひものペンダントみたいなものを襟元に巻き付けているのを人に見られたくはない。別に会社から怒られるわけではない。そういう問題ではなく、完全に見た目の問題だ。

結局、ネクタイを多少緩めたときに、みっともなくならないようにしたいという思いが、ワンタッチネクタイに引導を渡した。私はこのようにたまたま環境が変わった事がきっかけで、ワンタッチネクタイを使わなくなった。しかし、ワンタッチネクタイの便利さや魅力そのものが衰えた訳ではないし、私の職場環境が変わっていなければ今でもワンタッチネクタイを使っていただろう。

ワンタッチネクタイについてのまとめ

まとめると、

  • ワンタッチネクタイは、上まできっちり締めているならばバレない
  • ワンタッチネクタイは、ちょっと緩めただけでバレてしまう
  • ワンタッチネクタイを緩めて身に付けていると、見た目がダサい
  • 会社の偉い人でワンタッチネクタイをダメだという人も、まだ居る
  • 世の中全体の動きとしてはワンタッチネクタイを許容していく流れがあるのではないか
こんな事だ。
ネクタイを上まできっちり締めていられる人ならば、割り切って従来型のネクタイをワンタッチネクタイに切り替え、それによって節約できる時間を他のことに有意義に割り当てる、という考えも悪くはないのではないだろうか。

おまけ ワンタッチネクタイカタログ


まずは最初に1本、試しやすい低価格。無難な紺色の定番レジメンタル(斜めストライプ)。
紺色のレジメンタルのワンタッチネクタイの写真


無難でビジネスに使いやすいオリヒカの2色セット。
ワンタッチネクタイ2本セットの写真


定番中の定番、ソリッドのレッド。ソリッドの色違いを何色か揃えるのも実用的。
赤無地のワンタッチネクタイの写真


ビジネスで使いやすい定番の柄6本セット。この1セットだけで毎日行けてしまう。
ワンタッチネクタイ6本組の写真


シックなネイビーのシャドーストライプ。
紺色無地のワンタッチネクタイの写真