ちゃんと使える品質で、いちばん安いオフィスチェアというと
コロナ禍を機会に、テレワークやリモート勤務は一時期勢いよく拡大しました。今はすっかり拡大の勢いは落ち着いてしまいましたが、最近では転職を機会にテレワークをスタートするという人がけっこう居る印象です。
普段は二級建築士として建築設計をしている私ですが、インテリアコーディネーターや一級カラーコーディネーターの肩書も持っている手前、インテリアに関する相談を受けることもあります。最近時々問い合わせがあるのが、自宅にテレワークのためのSOHO環境を作る事に関する相談です。
中でも特に多いのがオフィスチェアに関する相談です。
「オフィスチェアって、調べてみたら高いんですが、安いの仕入れてくれませんか?」
「オフィスチェアが買いたいと思って、近所の青緑色の看板の家具のチェーン店に行ったらイメージ通りの製品が無いんですが、仕入れられますか?」
そんな話が多いです。残念ながら、今は家具の仕入れ販売はやっていません。なので、私の目で見て良さそうだという製品を見繕って、品揃えの多い通販サイト(まあ大体アマゾン)で紹介しています。
私の知り合いに限らず、世の中にこういう情報を必要としているのではないかと感じたので、ちょっと前に書いた記事をアップデートしてみました。
私は今はすっかりコアな設計畑に居るのですが、以前、大きな上場会社の総務部門に居て、その中でオフィス管理を担当し、家具の購買も任されていました。言ってしまえばケチな会社でしたので、いつもタイトな予算でやりくりしてきました。予算がタイトだからといって何かしらの欠点のあるものを買ってしまえば、上司や同僚から容赦なく批判されるという、厳しい環境でした。総務部門の担当者には、よくある話ではないでしょうか。
オフィス家具とはつまり業務用の家具ですが、それを選ぶのは、やってみると難しいものです。家庭向けの家具を選ぶのに比べれば、確実に難しいです。どういう部分が難しいのかというと、求められる性能をクリアする事が難しいです。色々な性能の中で特に重要なのが耐久性です。オフィス家具はほとんどの人が思っている以上に耐久性が必要とされるものです。ここ日本のオフィスでは特に、ゆったりのんびりと仕事をしていられる人などあまり居ません。多くの人はせわしなく、時間に追われて行動しています。いきおいオフィス家具は知らず識らずハードな扱いを受けています。その中でも、椅子というのは、ひときわ頑丈さへの配慮が必要です。頻繁に動かされるものですし、人の体重という、けっこうな荷重がかかるものでもあります。急いで立ったり座ったりする荷重や衝撃を繰り返し受け止めますし、何気なく座る位置や姿勢を変える動作のときにも、結構な摩擦や衝撃を受けています。そうした耐久性に加えて、長時間座っても疲れにくい事、色々な体格の人に幅広く使いやすい事も要求されます。
たとえば最近、大型の家具店やホームセンターに行くと、メッシュのハイバックの背もたれに、クロムメッキのパーツを多用したオフィスチェアが流行っています。見栄えは良いですが、基本的にこういう商品のほとんどは、毎日のオフィスワークの使用には耐えられません。耐久性がまるで足りないのです。張り地の摩耗やたるみ、クッションのへたり、構造パーツの緩みやガタつきという劣化が数ヶ月、早ければ数週間で生じてきます。
基本的に、自宅のテレワークで毎日長時間使うならば、家庭用の家具を使う事を考えるのではなく、業務用のオフィス家具を使う事を考えたほうが良いです。毎日長時間仕事で使うのには、ある程度の耐久性が必要で、耐久性が不十分だと、仕事をするのに不自由が生じます。
オフィスチェアが劣化する事による問題は、感覚的に快適でなくなるだけの話ではありません。仕事のパフォーマンスにも影響を与えます。人間工学的に作業がしづらくなる事はもちろん、使いづらさから来る精神的なストレスや集中力の低下なども悪影響に加わり、様々な問題が複合して、組織にいるたくさんのスタッフの生産性を、目立たないところで少しずつダウンさせてしまいます。ですので、多くのスタッフをテレワークで雇用するのでしたら、マネジメントをする人にも理解が必要で、しっかりとした椅子を購入するための手当を支給するなどの対応をお薦めするところです。
そして気をつけたいのが、家具の劣化は、ある程度の期間の使用を経てから現れてくる点です。家具やさんの売り場にある時点ではその劣化のしやすさをなかなか見抜けません。売り場にある見本は、実際のオフィスにある椅子のようにハードに扱われるものではなく、せいぜいちょこんと座られる程度です。なのでコンディションは新品に近いものがほとんどです。なので試しに座ってみたとしてもヘタリや摩耗がなく、まだ座り心地が良いままで、どの製品も問題のない製品に見えてしまいます。製品の耐久性がどの程度のものかを目利きするには、リアルに製品と関わる経験から得られるような、イスの材質や構造についての表面的ではない理解がある程度必要で、案外難しい事なのです。
もちろん、デザインが洒落ていながら、十分な耐久性までも備えた製品というのもあるにはあるのですが、そういう製品は、価格が相当高額になってしまいます。その出費に見合うだけ、そのイスに座って稼いで回収できれば問題ありませんが、それでもいくらか大きな先行投資になります。
実際にオフィスで使い勝手が良く、耐久性もあって、価格がそこまで高くないという、いわゆるコスパが優れている製品は、あまり奇をてらわない伝統的なタイプで、見た目にもガッチリとしている製品です。そういった実情は、品質の良いものや悪いもの、新しいものや年季の入ったものなど、実物を数・種類ともある程度見て、触れる事でようやく感覚として分かってくるものです。しかしその道の関係の仕事でもしていない限り、多くの人にはそういう感覚を養うような機会や接点がないものでしょう。ごくふつうの生活の中で、オフィスチェアを購入する事はそんなに何度も経験できる事ではありません。
そこで、特に購買の経験を積んだ人でなくても、できるだけ失敗せずにオフィスチェアを選べるように、具体的にはどの様なポイントをチェックして製品を選べば良いのかという事をまとめてみました。
耐久性のポイント
- 各パーツの幅や厚みがしっかりしていて、全体的に見た目ががっしりとしている事
- 張り地に厚みとコシが感じられ、すぐに分かる様な毛羽立ちや光沢のムラが無い事
- パッと見て目立つほどの、尖った箇所・飛び出ている箇所・華奢な箇所がない事
疲れにくさのポイント
- クッションにむっちりとした強い弾力があり、十分な密度が感じられる事
- 背もたれの角度が可変式であったり、反発力の調整可能なロッキング機構などでいくらか動かせる事(座面と背もたれとのなす角が一定に固定されたままロッキングするものは、疲労の軽減効果がやや薄いので、どうせお金を出すのならば避けたほうが良い)
色々な体格の人が使いやすいポイント
- 座面の高さが調節できる事
- 座面の面積がある程度広い事(座面がせまくても体格の小さい人しか使わなければ問題ないが、体格の大きい人が使うときに使いづらい)
具体的におすすめの製品は
流通の進歩によってか、業務向けに十分な品質のオフィスチェアの低価格化はずいぶん進みました。2000年代に入った頃、満足な品質の製品を買おうと思えば1脚あたり2万円近くは見積もっておく必要がありました。しかし今日では、何か特別にプレミアムなものでない、スタンダードなタイプの製品ならば1万円台の予算でも満足の行く品質のものを調達できます。かつては手が届かなかった国内有名メーカーの製品が安くなり、手が届きやすい価格になりました。オフィス家具の購買担当者には、調達業務がひと昔に比べれば楽になったと感じている人が少なくないのではないでしょうか。
どうも、最初にアスクルでプラスの高品質な製品が安く売られるようになってから、他のメーカーが対抗していく流れがあった様に思います。今日では、アマゾンに大手メーカーの製品が幅広く集まっており、そこが価格競争の主戦場になっている様で、オフィスチェア製品の価格は見ていると頻繁に変わります。そして、タイミングが良いとある特定の商品の特定のカラーが瞬間的に安くなったりするので、私はチェックしています。
そのように、今日ならではの安くて品質の良い、いわゆるコスパの優れた製品には、具体的にどういう製品があるのでしょうか。数ある製品の中から、私自身がよく人に紹介している、コスパが特に優れた製品をピックアップしてみました。手っ取り早く失敗のない購買をしたい、と考えている人には参考になるのではないかと思います。低価格である事もかなり重視して選んだので、特に、予算がそれほど潤沢でないスタートアップの企業や個人のテレワークには、役立ててもらえるのではないかと思います。
(この記事は2019年6月12日に書かれたものに最近の情報を加味して加筆・更新したものです)
この価格でハイバックに近い大きめ背もたれのNEXIS C01。外観的に布でくるんである部分が多く、住宅内で使用する場合にインテリアに馴染みやすい。もちろん品質は申し分なし。反発力調整可能な背もたれロッキング機能つき。
背もたれを左右2本の支柱で支えるタイプで、腰の部分の通気性が良い。ビビッドな張地の色とグレーのフレームが、ポップなカラーリングのオフィスインテリアに向いたオカムラ ビラージュ。背もたれのトップの水平ラインがやや強調された、全体的にシャープなデザイン。反発力調整可能な背もたれロッキング機能つき。
イトーキ オフィスチェア サリダ YL2 YL2-UB 肘なし アンバーブラウン
シックなブラウンや、座面と背もたれの色が異なる2トーン、フレームのカラーがブラックとホワイトの2色展開などなど、本格オフィスチェアの中ではひと味違うカラバリ展開から、インテリアにこだわったオフィスでの指名が急増中のサリダYL2。このYL2はSOHO向けに開発されたYLシリーズのベーシックタイプ。ゆったり広い座面でありながら外側に無駄な出っ張りがないのでコンパクトな空間に収まるという、工夫された実用的なデザイン。反発力調整可能な背もたれロッキング機能つき。
TRUSCO(トラスコ) オフィスチェア MC-2 背面メッシュタイプ
通気性の良いメッシュの背もたれ。メッシュというのは、安物を買ってしまうと耐久性の不足が目立ちやすく、たるみや摩耗によるほころびなど、目立つ難がすぐに出てくる。私が知る限りメッシュ背もたれでしっかりした耐久性のある製品では、今のところこのトラスコ中山のMC-2が最安で、この品質なのに奇跡的とも言える安さだ。これを下回る価格の他の製品がもし見つかっても、粗悪品である事の覚悟が必要だと思う。反発力調整可能な背もたれロッキング機能つき。
【配送・組立・設置込】 コクヨ オフィスチェア 事務用回転イス 10シリーズ CR-1Z ローバック 塗装脚 PVCレザー/グレー
昭和レトロな外観の現行モデル。デザインばかりが今風な安物なんかよりも、長時間の座り心地はずっと快適だ。配送・組み立て・設置がセットでこの価格。組み立ての失敗による破損等の心配が要らない。肘付きのモデルや座面と背もたれ部分がファブリック素材のものなどのバリエーションもある。キャスターはフローリング用。反発力調整可能な背もたれロッキング機能つき。