災害や事故の時のJR(ジェイアール)を見て思う事
JR(ジェイアール)と他の私鉄各線には色々な違いがあると思う。
私はそのひとつに、「マインドの違い」があると思う。 そしてそれは些細な違いだとは思わない。他との違いを特徴的づけるような、重要な違いのひとつだと思う。
昨晩、千葉・東京・埼玉の辺りで最大震度5強、Yahoo!地震情報によるとマグニチュード6.1の地震が起きた。
この文章を書いている今は、一夜明けた翌朝の通勤ピークの時間帯に入り始めた早朝だ。私鉄各社がほとんど平常通りに運行している中、未だ運転を見合わせているのがJR各線だ。運転を開始した線もあるが、それらの線も間引き運転をしたり徐行運転をしたりしている。
Twitterのトレンドには今、武蔵野線/入場規制/電車遅延/運転見合わせ/運転再開/東海道線/京浜東北線/横須賀線、など、電車に関するワードがランクインしている。そしてこに含まれる路線名はJRの路線名ばかりだ。脱線した「舎人ライナー」というものがあるが、それ以外でトップ20にランクインしているのはもっぱらJR線だ。
私はずっと首都圏で暮らしている。私鉄・JRを問わず、電車のトラブルというものは度々起こる。それは家でゆったりと落ち着いて居られる時にばかり起こるとは限らない。乗車予定の電車が止まろうが、出勤やら帰宅やらその他の用事やらで、なんとかして目的地まで移動しなければならないという状況はよくある。電車が復旧するまで待ったり、振替輸送を利用したり、色々な判断が必要になる。判断の仕方で、目的地にたどり着くまでの所要時間は大きく変わる。
そういう場合に私は、誰かから教わる事もなく、いつからとも知れず、この様な法則みたいなものが頭に浮かんでくる様になった。
- 交通トラブルが発生した時、私鉄各線ならばなんとかして乗客を多く運ぶ為に頑張る。
- 交通トラブルが発生した時、JRならばなんとかして乗客を運ばない為に頑張る。
この考え方をベースに判断すると、振替輸送を利用するか、運行再開まで待つか、大きく先を読み間違える事がない。いつもベストな選択からそんなに遠からずの、それなりにうまい具合の判断ができている。
他に、私はこんな印象も持っている。JRは、トラブルで電車が止まった時に、アナウンスで復旧までの所要時間を長めに言う。例えば、「運転再開は40分後の予定です」と言う。そう言っておきながら、20分後ぐらいに運転再開する。電車が止まってから運転再開するまでの間には「振替輸送をご利用下さい」とひたすら他の交通機関の振替輸送を推奨するアナウンスをジャンジャン煽るみたいに流す。自分たちの電車には乗らないでほしいと言わんばかりだ。私鉄各線がやるみたいに「運転再開の見込みが立ちましたのでご乗車になってお待ち下さい」という案内をJRがするのを聞いた記憶がない。運転を再開する時には、再開するギリギリちょっと前にアナウンスをする。こっそりという言葉で表現したくなるような、運転再開の仕方だ。
私は思ってしまう。どうやら、JRというのは、少しでも人を運びたくない、要するに仕事をしたくない、という考えが行動のベースになっているのではないかと。
そして私は3.11の東日本大震災の時を覚えている。平日の午後に大きな地震が起きて、首都圏の電車のほとんどがJR・私鉄を問わず軒並み運行できなくなって止まってしまった。夜になっても殆どの路線が復旧できなかった。東京のオフィス街の職場から自宅まで歩いて帰る事のできない人(いわゆる帰宅難民)が大勢現れた。鉄道の駅でどうにか運転再開しないかと待っている人も多かった。私鉄各線や地下鉄線は、この様に行き場のない人々を駅構内に受け入れて、たびたびの余震で不安になりながらも寄り添い合える居場所を提供していた。一方JRは、駅構内入り口のシャッターまで降ろして人々を徹底的に駅の外に締め出した。同じ鉄道会社なのに、まるで正反対の行動だった。
かつて労働組合の活動が盛んな国有鉄道であった事が、JRのマインドに影響しているのだろうか。職務怠慢と言えば言い過ぎかも知れないが、しかしそういう方向性だ。仕事の頑張りに対してブレーキをかける心理が強く働いているのではないかと思う。サービスを提供する事で世の中を便利にして喜びを感じるという事が少なく、手を抜きたい、私的な満足を優先したいという欲求が多いと、人はそうなってしまうのではないか。単純に希望だけを言えば、現在のマインドから変わって、他の私鉄各線と同じ様になって欲しいものだ。そうはならないだろうが。
そういうJRを見て思うことがある。私自身がJRの従業員でなくて良かった、という事だ。他の会社で働くのに比べて、仕事のやりがいを感じにくい職場だと思うからだ。こういうマインドの環境で働き続けるというのは、もしも私ならば、きっと地獄の様に辛く感じるだろう。私は昔、とても若かった頃、今と全く違う職種の仕事をしていた。当時は仕事がつまらなくてたまらず、毎日終業時刻が来るのを待ちわびていた。そういう時、終業時刻はなかなか来ない。毎日を地獄のように感じていた。さいわい、今は違う。毎日どれだけ仕事を進められるか、という事に必死になっている。1日があっという間に終わる。朝職場に出勤するのが辛くない。楽しみですらある。
JRの職員の人は、どんな気持ちで働いているのだろうか。もちろん会社を改善させたいと希望を持っている人も居るとは思う。しかし、きっと多数派ではないだろう。JRを見ていると、気の毒になる。できるだけ目を向けたくないし、考えたくないし、関わりたくない。いつの間にか私は、そういう思いをどこかに持つようになっている。