プロが調理に使う「あんべら」を家庭のキッチンで使い倒す
あんべらとは
「あんべら」という調理器具があります。どこの家庭にもあるわけでなく、どちらかというとプロの料理人や製菓職人が使う業務用の調理器具と一般的には考えられているようです。
しかしプロの料理人に限らず、あんべらは一般家庭で料理する人に取っても、多くの使いみちがあって使い勝手が良い調理器具なのです。便利なので1-2本はどの家庭でも置いておく事をおすすめします。
まずあんべらとは一体どういう調理器具なのかというと、細長いスティック状の板で、両端が半円形にカットされたものです。だいたい材質はステンレスです。スティック状の中央部分がくびれているものもあれば、くびれずにストレートになっているものもあります。構造としてはこの上なくシンプルな調理器具です。
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あんべらの外観。私の家にあるのはこの2本。出番は多い。 |
あんべらの特徴と機能性
調理器具というものは次々新しいものが生み出されます。新しい技術を応用して、昔はできなかった工程を可能にする製品が生まれていきます。しかしだからといって、ふつうの家庭では、収納スペースの限度やらメンテナンスの手間やらの事情で、やたらに手持ちの調理器具を増やすわけにも行きません。むしろ反対に、いかに手持ちの調理器具少なく絞り込んでいくか、というミニマリスト的な方向性で知恵を絞っている人も多いことだと思います。
そのように自分の手持ちの調理器具を厳選する場合に、残る調理器具はきっと
- 複数の用途に使いまわしが効くもの
- 収納スペースを取らないもの
- 洗ったりなどのメンテナンスが楽なもの
これらの3つの特徴のうち、3つあるいは2つには当てはまるのではないでしょうか。
あんべらというのは、見ての通り、まさにこれら3つの特徴の全てに当てはまる調理器具なのです。
あんべらは、「あん(餡)」+「へら」という事であんべらという名前で呼ばれています。和菓子屋さんなどが、餡を生地で包む場合に使うための道具、という事です。
似たような道具は海外にもあって、そのため外来語の別名もたくさんあります。「スパチュラ」「スパテラ」「スパテル」「パレットナイフ」などの呼び方です。ただ、これらの呼び方は、ヘラ状の調理器具をある程度幅広く総称したものです。例えば、日本のあんべらの様にシンプルな板状のものばかりでなく、木製のグリップが取り付けられたものも同じ名前で呼ばれます。
あんべらの使いかた色々
和菓子屋さんのイメージが強い名前ではあるものの、あんべらは和菓子を作る人であろうとなかろうと、料理を作る人ならば誰にでも多くの使い途があり、役立つ存在になってくれます。シンプルな形を活かして、すくう/塗る/均す/かき混ぜる/切る/つぶす等の様々な作業ができます。シンプルであるだけに、アイデアしだいで色々な使い方ができるのです。
私は一人暮らしをしていて、自分の食事はほとんど自炊しています。もともと料理が好きなほうだとはいえ、作る料理といえば手間も時間もかからない簡単なものに決まり切っています。凝ったレシピは作りません。ましてや和菓子など、自分で作ろうなどという発想になった事すらありません。そんな私でも、日常の料理であんべらは大活躍しています。
具体的にどんな使い方をしているのかといえば、
- 食パンにバター/マーガリン/ジャム/マヨネーズ/からしなどを塗り拡げる
- 焼きおにぎりに味噌を塗る
- 合わせ調味料を自分で作るときに混ぜ合わせる
- ヨーグルトに砂糖やはちみつやジャムを混ぜる
- 餃子の皮にあんを包む
- ピーマンの肉詰めのひき肉を詰める
- 生のきゅうりに味噌やもろみを乗せる
- 瓶やパックに入った調味料や漬物やジャムの最後の残りをかき取る
- まな板と組み合わせてビニール袋のパッケージの中身を絞り出す
- バナナ、豆腐、焼き芋、ふかし芋などの柔らかい食材をカットする
- にんにくを潰す
- 肉や魚の下味の塩をなでて馴染ませる
ちょっと思い付くだけでこんなにあります。これらの使い方について、ひとつひとつ暗記している訳ではありません。いつもキッチンのすぐに使える場所に置いていて、感覚的に使えそうだと思ったら使っています。菜箸を使うのと同じ様なもので、何気なく感覚的に使っています。シンプルな形状なので、アイディア次第で他にもまだまだ色々な使い方ができそうです。そして壊れにくそうなので、紛失したりしなければ、きっと相当長く使えます。洗いやすく乾きやすいので、後の洗い物の手間を気にせず、ちょっとした場面でも躊躇なくどんどん使えます。多くの種類の調味料をあれこれ使って味付けをする場合など、調理の仕方によっては、一度の料理に何本も使えたら便利そうだと感じる場合はあるので、もう少し本数を増やしても良いのかも知れません。
因みに、私が実家で両親と一緒に暮らしている頃、実家にはあんべらがありませんでした。私の母はこれらの作業をあんべら以外の道具で行っていました。だいたいスプーンを使う事が多かったです。私も時々手伝いをしていましたが、当時スプーンで作業していたのに比べると、あんべらを使った方が作業しやすい場合が多いです。スプーンだと、くぼみに色々なものが溜まってしまいがちです。それに対し、あんべらだとフラットなので材料が溜まる事なく使い切りやすいですし、塗り延ばしたり塗り拡げたり、パテ状のものの形を整えたりする作業がしやすいです。スプーンで感じるもどかしさとバターナイフで感じるもどかしさを、あんべらは両方とも解消してくれるという感覚が私にはあります。
あんべらを売っている場所は
あんべらは世間では一般家庭向けのものではなく業務用の調理器具と捉えられている様で、近所のスーパー等で買おうと思っても、意外に売っている場所がありません。私があんべらの存在を知ったのは餃子の作り方をネットで調べた時で、その時にすぐに手に入れたいと思ったのですが、近所では売っていませんでした。なのでネット通販で買いました。
リアル店舗で売っている場所といえば、例えば東京都台東区の合羽橋道具街などにある様な、業務用の調理器具店などに行けば売っています。家庭向けのキッチン用品店でも、だいぶ大きくて品揃えの良いお店なら売っているかも知れません。あるいは、スーパーの催事の、業務用調理器具を集めた金物市などでも、手に入る場合はあるかも知れません。いずれにしても、手に入るのはある程度専門的な調理器具を品揃えしてあるような場所です。
価格は数百円程度と試しやすい金額なので、ネットショッピングのついで買いだとか、送料無料まであと少しの時などにでも、1本試しに買ってみる価値はあるでしょう。