BGMに適した音楽のジャンルは?

私が思うBGMに最適な音楽ジャンル

私は音楽が全般的に好きだ。様々なジャンルの音楽を聴く。ヒットチャートで上位にランキングするメジャーなものからマイナーレーベルのアンダーグラウンドなものまであれこれ聴く。英・米・豪・加の音楽が中心だが、それ以外の国の、いわゆるワールド・ミュージックも聴く。そして、家に居る時も、移動中も、何か映像を見ている時以外は何らかBGMが無いと物足りなく感じて、何かしらのBGMを流している。

そんな私は家で勉強したり家で仕事の事務作業をする時間がふつうのサラリーマンに比べて多めである。そういう時はなおのこと、BGMが欠かせない。もともと私はBGMなんか流すと集中できないからダメだなんて事を大人たちから言われて育ってきた。始めは私もそう信じていたが、今では実際にはそうではない事が分かっている。逆にBGMが無いと、部屋の外や上の階からのノイズが気になってしまう時が多い。どういうBGMかにもよるが、音楽の内容や音量を適切にすれば精神的に安定して仕事や勉強が進むという事に気付いた。その音楽の内容としてどんなものが良いかというと、私にとってはスムースジャズが今のところベストだ。これはきっと、私だけでなく、ほかの多くの人にも勧められると思う。

家の中で音楽を聴く人のイラスト

私はこの結論にたどり着くまでに、様々なジャンルの音楽を試して試行錯誤してみた。スムースジャズに近い傾向のジャンルとして、軽めのポップスだとか、ビバップのジャズだとか、クラシックだとかも試してみた。この辺りのジャンルと比較しても、スムースジャズがよりBGMに適していると思う。逆に、スムースジャズを試してから他のジャンルを試すと、いまひとつスムースジャズにはかなわない気がして、やはりスムース・ジャズが適していると再認識してしまう。

それではスムースジャズのどんな所が、他のジャンルと比べて良いのか。 

まず、インストゥルメンタルである点だ。ヴォーカルものは総じてあまりBGMに適していない様に感じる。どうしても無意識に歌詞を聴こうとしてしまったり、歌メロを追いかけてしまうのがやめられない。いきおい、肝心の勉強や事務作業に向けたいはずの集中力が音楽の方にも向かってしてしまう。

その点で、ジャズやクラシックといったジャンルは全般的にインストものが多いので、BGMに適していると思う。さらに、アコースティック楽器が中心で音質が心地良く、BGMに適したもうひとつの大事な要素も備えている。しかしそれらがすべてBGMに適しているとは言い難い理由は、音量があまり一定しない事がよくあるという事だ。例えばクラシックやジャズのビバップでは、うるさくならない様にオーディオのボリュームを調整しようとすれば小さな音で演奏する部分が全然聴こえくなる。逆に音の小さな部分を聴こえるようにすると音の大きい部分がうるさくてたまらない。

こういう問題が起こらないのがスムースジャズなのである。

スムースジャズとはどんな音楽ジャンルか

はじめに断っておくと、スムースジャズとは何というかまあちょっとダサい音楽と見られている。基本的にリスナーはオッサンか、若いけれどもイケてない人が聴くみたいな音楽だ。何の前置きもなく無防備に「好きな音楽はスムースジャズです」という結論から入ってしまうと、まずイキのいい人々からはダサがられてしまうと思っていい。ピンと来ないなら、スムースジャズのアーティスト写真を色々と見て欲しい。特にそのファッションに注目して欲しい。そうすれば色々分かってもらえるものがあるだろう。

ただ、音楽にかなり詳しくてマニアックな人だと、また別の聴き方があると思う。例えばデ・ラ・ソウル等の様な幅広い引き出しを持つヒップホップのアーティストがずっと前からサンプリングしていたりだとか。イケている音楽通の間で今話題の「ヨット・ロック」なんかともある種の共通点がある様な感じだ。

 我が国で、スムースジャズというジャンルの知名度はイマイチであるが、そもそもどういうジャンルなのか。まずはジャズの一種である。数あるジャズのスタイルの中では、歴史的にみて比較的新しめのスタイルである。そして、英語で書けばsmooth jazzで、世界中で通じる音楽ジャンルだ。ある程度詳しい人はよく知っていると思うが、日本での音楽のジャンル分けには、カタカナでそれっぽく名付けてあるからてっきりグローバルに通じるものかと思いきや、意外にも日本だけでしか通じない和製英語的なジャンルの呼び名でした、みたいなものが結構ある。そういう日本独自のジャンルは、もちろんアメリカ人だとか、他の外国人だとかに言っても意味が通じない。そんな中で、スムースジャズというのはグローバルに通用する。検索エンジンでsmooth jazzと検索すれば世界中のたくさんの情報が見つかる。

ジャズというのはそもそもひとつの音楽ジャンルだが、そのジャズというひとつのジャンルの中にも、さらに細分化された、ジャンルの中のジャンルみたいなものがある。それを様式(スタイル)と言ってもよかろう。それらの中で最も広く知られているのはビバップというスタイルだろう。「ジャズ」という一語だけで最も多くの人が最初に連想るのは通常このビバップのスタイルではないかと思われる。だいたい1940年代~60年代にものすごく人気が出て、その時期には今でも名盤などと呼ばれて愛聴される多くの傑作が生まれた。有名なアーティストにはマイルズ・ディヴィスだとかソニー・ロリンズだとかジョン・コルトレーンだとかアート・ブレイキーだとかいう人が居る。

ではこのビバップ、音楽の内容はどんなものなのか。これだってBGMに適しているんじゃないのか。ジャズというと、使っている楽器は基本的にアコースティックなものが多いし、テーラードジャケットや襟付きシャツを着て演奏している人が多いし、聴いている人もちょっと真面目そうな人が多そうだ。それだけに、ロックやポップスよりも大人しい音楽と思われがちではないだろうか。ところが音楽の中身はそんなに大人しいなんて事は無い。確かに、基本的に使っている楽器は電子楽器よりもアコースティックが中心的ではある。しかしそれらの楽器で演奏される音楽には大きな抑揚や起伏があり、概してとてもエモーショナルである。静かで穏やかな部分や、軽やかで心地よい部分もあれば、一方で高度な演奏技術を存分に駆使して爆速のアドリブをぶちかましたり、ブヒーブヒー、バリバリ、ズダダダ、ガシャーンガシャーンと激しい演奏をして独特の音世界を表現する部分もあり、その振れ幅がものすごく大きいのだ。普段ジャズをしっかり聴く機会のない人は、もともとの先入観よりもずっと過激な音楽だったという、驚きさえ感じるのではないか。一方で、ベースソロの時に、まるでBGMが止まったみたいに聴こえなくなるという問題もある。ビバップではだいたい一曲演奏する中で各楽器が交代でソロを取るのだが、ベース(ウッドベース)にもソロは回って来る。ウッドベースは、もともと楽器の音量が小さくて聴こえにくい。なので、その小さいベースの音をかき消さない様に、ベースソロになると周りのドラムやピアノもごくわずかな、極小の音しか鳴らさなくなる。だからベースソロは他の部分に比べて極端といえるほど音が小さい。慣れていない人は、「あれ、演奏止まっちゃった?」と思うぐらい小さい。

この様に、ジャズの王道的なビバップというのは、時に激し過ぎ、時に聴こえなくなるという問題があるので、そういう点ではあまりBGMに向かないのだ。それに対し、スムースジャズというのは、例えばこういうウッドベースのソロなんてものがまず無い。音楽的にビバップと多くの共通点はあるものの、趣がいくぶんか異なっている。その異なり方が、上手いことBGMに適した方向に異なっている。使用する楽器、機材の設定、和音、音階等に関してはビバップと多くの共通性がある。それをディスコとかR&Bとかファンクとかハウスみたいな、いわゆるクラブミュージック的な、心地よくダンサブルで一定したビートに乗せ、一定のグルーヴ感をキープして終始落ち着いた控えめな演奏をする。多少の起伏はあれど、それはビバップの様な音楽に比べれて振れ幅はずっと少ない。演奏法の限界を試すかの様な激しい弾きまくりのソロ演奏もなければ、逆にコンプレッサーを使わないアコースティックベースのソロみたいな、極小の音量の部分もない。多くのポップスと同じ様に、曲全体を通して音量が極端に大きい部分や小さい部分がなく、一定している。これらがビバップとは違う点である。

ジャズの世界では、ビバップが王道視される一方で、スムースジャズはちょっとイロモノ的な目で見られるスタイルではある。しかし今日ではスムースジャズのリスナー人口は多く、コアなジャズのリスナーでない人にはかえってビバップなんかよりも聴きやすかったり、あるいはジャズの入門者の入り口になったりする音楽である。

これがBGMにはちょうど良いのだ。というより、すでに実際に様々な場面でBGMに使われまくっている。

スムース・ジャズは既にあちこちのBGMで使われている


例えばこんなところで使われている。

  • テレビやラジオの交通情報
  • テレビやラジオの気象情報
  • テレビやラジオのニュース
  • 旅行番組
  • 行政関係のお知らせ
  • ロビーや待合室 
  • 落ち着いた物販店の店内BGM


意識して聴いてはいないけれど、曲を聞けば「この曲聴いたことある」というケースもよくあるのではないだろうか。

そんなスムースジャズだが、ジャンルの誕生はそんなにはっきりしたものではなく、70年代~80年代にそのシーンの原点みたいな作品がリリースされ、徐々に一つの音楽ジャンルとしてまとめて認識される様になってきた様だ。

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