Brandit M-65 FIELD JACKET CLASSICの購入レビュー

Brandit M-65 FIELD JACKET CLASSICを買った感想

2021-2022のF/Wシーズンに、Brandit M-65 FIELD JACKET CLASSICを買ってみた。

コロナ禍のせいなのか、SDGsに沿った動きなのか、アパレル製品市場が縮小している気がする。つい2-3年前と比べて、売っている商品がどう見ても少ない。

そんな時期に、いちばんメインで着ていた真冬用のアウター(アウトドア系の中綿入りのコート)が傷んできてしまった。なので新しい冬物アウターを買おうとした。しかし、コロナ前に比べると信じられないほど商品が少ない。今が本当に冬物のシーズンだとは思えないような状況だ。もともと商品の種類が少ないうえに、それらの少ない商品もサイズ切ればかりだ。

傷んだコートの後継として、同じ様なアウトドア系の、腰まである真冬用のコートを買おうと探してみたのだが、とにかく商品が少なくて買いたいものがまるで見つからない。何か手はないのかと考え始めて、ふと思いついた。アウトドア系が無いのならミリタリーだ。M65があるじゃないか。今どきのアウトドア系のアウターの様に軽くはないが、そのぶん安いし、外側の生地は丈夫だし、コーディネートの幅が広いし、雨の日でも着られるし、ライナーを付ければ東京の冬の一番寒い時期でも十分対応できる。アウトドア系のコートにこだわるあまり、イマひとつピンと来ないものを無理に買ってしまうよりも、少しテイストを変えて、納得できる定番に戻ってみるのもいいかも知れない。

そこでM65を探すと、色々な製品が豊富に売っていた。ミリタリー系のアパレルはマニアによるしっかりした支持基盤があるせいなのか、例年とあまり変わらないみたいだ。ひとまずほっとした。それらの製品を色々と比較検討してみて、その結果Brandit(ブランディット)のM-65 FIELD JACKET CLASSICを買った。

Branditというのはドイツのアパレルメーカーで、M-65と製品名に入っているとは言えもちろん米軍が実際に来ているものではなく、レプリカだ。しかし全体的に、ちゃんとレプリカと呼べるような、実物にかなり似せた作りになっている。例えばここ日本のアパレルメーカーのユニクロやワークマンが時々M65と言ってアウターを売る場合がある。それらは全体的にそれっぽくはあるものの細かい部分まで似ている訳ではない。それらの製品とは違って、ちゃんとレプリカという括りに入る様な製品だ。価格が比較的安めなのに、なんとなく品質が良さそうに見えて気になっていた。ドイツと言ったら、日本と同様、品質にこだわるモノづくりの国のイメージだ。気になって何度も見ているうちにどんどん興味が湧き、そのうちにこれは買った方がいいんじゃないか、と思えてきた。そこで買ってみた。結果、買ってみて正解だった。この価格でこの内容ならとても良心的だと思える、しっかりした製品だった。

しかし、イタリア人のM65好きは有名だが、ドイツ人までもM65が好きだったとは。M65って改めてすごいな。

縫製のクオリティ

まず注目していたポイントの1つは、縫製のクオリティだ。米軍ミリタリーものの実物は、我々日本人から見ると結構粗っぽく感じるような仕上がりだ。それと比べるとこのBranditの製品は確実に上のレベルの仕上がりだ。ステッチには目立つ蛇行なんて無いし、ステッチを継ぎ足してある部分も縫製作業の丁寧さが見て取れる。本当はステッチを継ぎ足さないように作れるのに、雰囲気を出すためにわざと継ぎ足したのではないかとさえ思えるぐらいだ。タグにはMADE IN CHINAと書いてある。同じMADE IN CHINAでも、例えば日本のメーカーが中国で生産している製品だと作りがきちんとしている、みたいな感じがある。このBranditの製品にもそれと同じ様な感じがある。ドイツのメーカーの製品はみんなそうなのだろうか。だとすればドイツのクラフトマンシップは素晴らしい。これからはすっかりドイツ製品びいきになってしまいそうだ。

比翼と胸ポケット周りのステッチ(Brandit M-65 Classic)
ポケットの位置がずれていたり、ステッチが蛇行したりしていない。

ウエストポケットのフラップの写真
ウエストポケットのフラップ。フラップの端とステッチの間隔が一定に揃っている。


袖口部分の写真
パーツの多い袖口部分は米軍の実物よりもきっちりした仕上がり。

スナップボタンは浮き上がってもめり込んでも歪んでもいない。

80%ポリエステル、20%コットンの生地

Branditの製品のひとつの特徴は、その生地だ。80%ポリエステル、20%コットンという材質で、ナイロンは混ざっておらずポリエステルの割合が多い。発注するときにそこは気になっていた。しかし、届いた製品の実際の手ざわりも光沢も重さも、全体的な質感としては米軍の実物とも他のメーカーのレプリカ製品とも大きな違いを感じないものだった。私はオリーブドラブを買ったが、色合いも光沢も違和感がない。メーカー公式サイトによると、撥水性がウリの生地らしい。雨の多い日本では好都合だ。ライナーの生地もこれまたしっかりした材質で、実物以上に生地の織り目が滑らかできれいな位だ。

ライナーの写真
内側のライナー。パイピングの仕上がりもとにかくきっちりしている。

ジッパー

ジッパーは、ひょっとしてYKKだったりしないだろうか、と期待をしていたのだが、YKKのロゴはどこにも見つからなかった。「B」と書いてある。BranditのBだろうか。ただ、動きは結構スムースで、ひょっとすると実物に取り付けられているIDEALよりもスムースかも知れない。ジッパータブの形状は、実物とははっきり違う、ダイキャストで作られたようなものになっている。しかし、着ているときはだいたい隠れてしまうので、そんなに気にならない。むしろ、実物のあの針金を曲げただけの様なものよりも日常着としては扱いやすい感じがする。

ジッパーのクローズアップ写真
YKKのロゴは残念ながら見つからなかった。代わりに「B」の文字が。

ジッパータブの写真
ジッパータブはこんな形。タブに取り付けられた紐状の布も、斜めにズレずにきちんと上下が重なる様に縫ってある。


サイズ感

サイズ感は、おそらくミルスペックの実物にだいぶ近いものだと思う。私の体格は169cm58kgで、Sを着ていくらかゆとりがある。昔ALPHAのM65のSMALL-REGULARを着ていた事があるが、そのサイズ感と似ている気がする。ライナーを装着した状態でジャケットやブレザーの上に着て通勤しようと思っているので、丁度いい。Sがラインナップ中の最小なので、これ以上小さいものを選ぶ余地は無いのではあるが。私の体格はきっとSとXSの中間ぐらいで、Sを着ればゆったりめ、XSを着ればぴったりめ、ぐらいなのだと思う。

まあM65のサイズが丁度いいとか大きいとかを説明するのはそもそも難しい。そもそも米軍の実物のM65は、SMALL, MEDIUM, LARGEといった胸囲差と、SHORT, REGULAR, LONGといった身長差による2軸のマトリックスのサイズ展開なのだ。輸入販売をする場合、これらの多種類のサイズを網羅して仕入れるのは大変だ。だから一般的にREGULARを中心に仕入れられている様で、SHORTやLONGは手に入りづらい。レプリカ製品を製造する場合だと、やはりそんなに多くのパターンで製造してなどいられないだろう。だから製造者によってサイズの展開の仕方には色々バラツキがあるのだろうが、おそらく多くの製造者が、米国REGULARの身長でのSMALL,MEDIUM,LARGEの胸囲のサイズを再現して作っている様だ。なので、米国人よりも全体的に低身長の日本人の多くには、なんとなく大きかったり、袖が長かったりするのだ。

そんな事もあるが、とりあえずM65の実物のレーベルに書いてある事を読めば、"COAT, COLD WEATHER, MAN'S FIELD"と書いてある。だからM65は洋服のジャンルとしてはコートとして着て欲しいという事で設計された物に違いない。例えば長身のモデルの人がわざと小さめのサイズを選んでジャケットみたいな感覚で着こなしているのを見ると、それはそれでかっこいい。それに対して、時代は少し古いが、映画ランボーの時のスタローンも、タクシー・ドライバーの時のデ・ニーロも、クレイマー・クレイマーのダスティン・ホフマンも、ジャケットという感じではなく、コートらしく見えるような、ゆったりしたサイズ感のものを着ていた。それもまた日常的・実用的なかっこ良さがあった。私はかなり筋トレをしているせいで肩幅がふつうの人よりもあるのだけれど、そうでなかったとしてもコートとして着るならば、私ぐらいの体のサイズでBranditのSサイズを着た時に、おかしいほど大きくはない。

私にとってREGULARはちょっと長く、SHORTの方が本来合っている筈なのだが、Branditの製品にはそんなサイズが無いのだから仕方がない。袖が一般的なコートよりも長いけれど、おかげで手袋をしていない時に手が寒くない様に、袖の中に手を引っ込めて着る事ができる。メーカーの公式サイトの外国人モデルを見ても、腕を下に垂らしたときに手の甲が隠れるぐらいの長さで着ているから、まあそんなに気にする事でも無い。

M65の細かい部分をあれこれ気にし始めたら、袖の長さだけでは済まなくなってくる。例えばスタンドカラーの高さはやけに高いし、フロントジップはやけに短い。一般的な民生品のアパレル製品のコートでこんな寸法の設計をする事はおそらくあり得ない。そういう部分に違和感や不便を感じて、「これはおかしい」「なんでこんな作り方をしているのか」と文句を言いたくなったら、一度冷静になって思い出して欲しい。あくまで軍事用品を買って、それを日常生活に転用しようとしているのだ。軍事用品として最適化した設計をしているのだから、民生品のアパレル製品とは違う部分もあるだろう。そういう違いはむしろ楽しみながら着るのが、この手のジャンルの衣料品との上手い付き合い方ではないかと私は思う。

重さ

重さは、実物や他のよくあるレプリカと変わらない程度だ。M65の重さを知らない人のために書くと、M65はゴツい見た目の割りに、結構軽い。もちろん、アウトドア系やスポーツ系のダウンや中空ポリエステルの入ったコート等と比べたら重いけれども、レザーだとか厚地のウールだとかオイルで防水したコート等よりもずっと軽いし、デニムやダックキャンバスのアウターよりも軽い。ライナーを装着すればもちろんその分の重みはプラスされるけれど、ライナー単体の重量は軽い。これだけ摩耗に強くて風を通しにくく、保温性もあるアウターでこの重量ならば、軽いと言えるだろう。

それに加えて、肩や肘にプリーツが入っていて、着た状態で関節を動かしすいという特徴もあるので、着ていて窮屈さを感じにくく、結構楽な着心地だ。着ていると肩が凝ってしまう、みたいなタイプのアウターではない。そこは見た目のイカツさとはいくらかギャップを感じさせる部分かも知れない。さらに、何度も着ているうちに生地が柔らかくなってきて、着倒しているうちに着心地がアップしてくるタイプの服だ。

Branditについて

Branditについては製品の実物を見た事がなく、知人からの評判も聞いたことがなかった。そこで思い切って試してみたのだが、全く悪いものではなかった。

特に細かい所までコレクター的にこだわるのでなく、日常の実用アパレル製品として着るならば、価格と品質で見てかなりコスパが高く、オススメだ。私自身は買って大正解だったと思っている。

ちょっと調べてみると、Branditは上にも書いたとおりドイツのアパレルメーカーで、アウトドアやストリートウェアやオートバイ向けという、他にあまり見かけない立ち位置のブランドだ。創業者が2人の元バックパッカーとの事で、好きな事を自由に組み合わせたのだろうか。街中から自然の中まで、幅広い場面で実用できそうな製品が揃っている。無骨で男臭いアイテムが多く、今風のオシャレな雰囲気だとは正直言い難い。なんか、ジャン・クロード・ヴァン・ダムだとか藤岡弘、が登場しそうな世界観だな、なんて勝手に思っている。それはともかくとして価格が控え目で品質がしっかりしているので、ブランドの雰囲気にこだわらず一点一点の品物の良し悪しを吟味して買い物をするタイプの人には、チェックしてみる価値のあるブランドだと思う。私も、今後買い物をする時の候補のひとつとして採り入れて行きたい。そんな事を、このBrandit M-65 FIELDJACKET CLASSICを買って思った。

レーベル部分のブランドロゴ
レーベルの部分はブランドロゴが。よくある感じだが、カッコ悪くはない。

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Branditメンズ M-65 クラシックジャケット

今回購入した商品はこれ。キルティングのライナーは別売りではなくセットになっている。本体とライナーはいくつかボタンを掛け飛ばした、仮に装着されたような状態で届いた。




Branditはバックパックも安い。おそらく材質や縫製はドイツ品質でしっかりしているのではないか。今とても興味津々だ。







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