大量の伝票の合計をできるだけ間違えず、早く、ラクに計算する方法

大量の伝票の合計を手で計算しなくてはならない場合

経理などの仕事では、例えば、100枚だとか200枚だとか、大量の伝票の金額や数量の合計を算出する事が必要な場合もあると思います。

伝票のように紙に印刷されたものしか手元にない場合、通常、特別なスキャナとOCRのシステムでも無い限り、人間が手計算で集計して合計値を求めなくてはなりません。

その場合に、電卓で合計を計算するという風に教わる職場が多いと思いますが、それは電卓の技能が相当上手な人でないと難しいものです。

私もそこまで電卓が得意でありません。ある程度努力はしたのですが、才能が無いのでしょう。ある程度で頭打ちです。しかし大量の伝票の合計を算出する事が必要な場合は何度も経験しました。そこで私は電卓を使う代わりに、Excelをう方法を自分なりに考え出しました。私にとっては、電卓を使うよりもずっと早く、疲れにくい方法です。それを紹介したいと思います。


1.伝票の並び順をロックする

まず伝票に細工をします。入力しようとする全ての伝票について、次のような事のうち、どれかをして下さい。
  • バラける心配のないファイルに綴る
  • 穴を開けてひもやリングを通す
  • 伝票の端っこに連番(ページ)を全て書き込む。
これらを行う時は、めくりやすさにも配慮して下さい。
なぜこういう事をするかというと、入力した順番を崩したくないからです。あるいは、順番が崩れても、元の順番を復元できるようにしたいからです。この工程を怠ると、うっかり伝票をバサッと落としたりした時に、それまでの作業が無駄になってしまいますので、欠かさないようにしましょう。

2.Excelに、縦に連番を入力する

Excelの操作を行います。
伝票のデータを入力する前に、まずは、単純に連番を縦に入力します。
伝票の枚数と連番がピッタリ一致するのが理想ですが、多少連番のほうが多くても構いません。少ないと支障がありますので、伝票の枚数よりも少なくならない様に連番を入力して下さい。



2.連番の隣の列に、伝票の数値を縦に入力する(1回目)

左手で伝票をめくりながら、伝票の数値を目で見て、右手でパソコンのテンキーで伝票の数値を入力します。小指でEnterキーを押して、通常の改行の操作で下へ下へとセルを移動しながら、縦に入力して行きます。全ての伝票の数値を一気に縦に入力してしまいます。途中で何となく間違ったような気がしても、そんなに神経質にならなくても良いので、最後までとにかく一気に入力してしまうのが良いです。テンキーのブラインドタッチはできるようにした方が良いでしょう。習得するのはそんなに難しくありません。


3.1回目に入力した隣の列に、再び伝票の数値を入力する(2回目)

一度入力をしたら、そのすぐ右隣の列に、全く同じ様に再び伝票をめくりながら、伝票の数値を目で見て、その数値を縦に入力して行きます。同じ作業の2回目を行う感じです。そしてこの時もまた、そんなに神経質にならなくて良いです。



4.2回目の隣に、1回目と2回めの入力値の引き算の数式を入力する

2回目に数値を入力した右隣の列に、1回目と2回めの入力値の引き算の数式を入力します。左右に隣り合ったセルの、単純な引き算です。引き算であれば、1回目と2回目、どちらからどちらを引いても構いません。

5.引き算の式を、一番下の行まで貼り付ける

4.で入力した数式をコピーして、一番下の行までふつうに数式でペーストして貼り付けます。下の写真は、伝票が100枚の場合です。

この時に、1回目と2回めで行数が一致せずにズレてしまったとしても、気にしなくて構いません。そのまま続きに進んで下さい。ただし、後で8.の章を読み飛ばさないようにして下さい。
ここまでで前半戦は完了です。
ここから先は、間違いのチェックと修正の工程です。

6.オートSUMで仮の合計を算出する

オートSUMで合計を出します。シンプルに、一番下の行の下でオートSUMを行って合計値を表示すれば良いです。下の見本の写真の場合、1回目と2回目の合計値が一致しません。このように一致しない場合は、どこか途中に入力の間違いがあるはずです。伝票が何百枚もあれば、まず一発で一致する事はありませんので、気にしなくても良いです。また、上にも書いた通り、行がズレていても構いませんので、それぞれの列の一番下にオートSUMの合計値を表示させて下さい。その場合も、この後に出てくる8.の章を読み飛ばさないようにして下さい。


7.間違っている箇所を探して修正する

Excelのワークシートを上にスクロールして、間違っている箇所を探します。1回目の入力と2回めの入力の引き算の結果が0になっていない箇所には、入力ミスがあります。反対に、1回目の入力と2回めの入力の引き算の結果が0になっている箇所は、ミスなく入力できたとみなしてOKです。理屈上、1回目と2回目を同じ値で打ち間違えた場合でも、この引き算の結果は0になります。しかし実際上、人間、同じ箇所で同じ数値に2度連続して打ち間違える事などという器用な間違いはしないものと考えて、無視して構いません。
下の見本の写真では、連番55の行が、1回目と2回目で異なる値を打ち込んでいます。どちらかが打ち間違いをした値のはずです。


伝票をチェックします。55枚目をめくって、正しい数字はいくらなのかを確認します。
伝票は、入力した順序がくずれない様に最初に綴じてあるので、入力した最初の伝票から順に1,2,3,4,…とめくって行って55枚目をチェックすれば良いです。不安な場合、併せて前後数枚の数値のチェックもしておけばより確実です。数値入力に苦手意識がある人でも、人間、そんなにメチャクチャな打ち間違いをするものではありませんので、チェックした結果には自信を持って大丈夫です。

伝票を確認したら1650が正しい値でした。
間違って2回目に1620と打ち込んでしまった箇所を、1650に直します。右側のセル(E列)の引き算の結果が0になります。
因みに、この例の様に、引き算の結果が「3」「30」「300」「3000」などの数値になる場合は多いです。プラスマイナスどちらも有り得ます。なぜかというと、人間の指はテンキーの上下の隣のキーを打ち間違いしやすいからです。例えば、1と4,5と8,6と9のようなパターンの打ち間違いをしやすいです。



E列を上から下までチェックして、全部0になれば完了です。そうなると、一番下のオートSUMの合計値が2つ同じ値が並んでいるはずです。この状態になれば9.に進んで下さい。

8.1回目と2回めとで行数がズレた場合のチェックと修正

入力した行数がズレた場合は少しだけ面倒です。でも少しだけです。
ズレた場合、例えば下の写真の様になります。
連番81の行から引き算の結果が0になっていません。ここがポイントで、ここから下がズレています。



伝票をチェックします。80枚目辺りから調べます。


80枚目から調べてみたら、1760→4400→4400→2750というのが正しい値でした。
おそらく2回目の入力で、4,400が2枚あったうち、1枚を飛ばしてしまったのでしょう。
正しく入力できていたのは1回目のほうでした。
正しく入力できた1回目はそのままにして、入力を誤った2回目の方を修正します。


セルを挿入するかたちで(下方向にシフト)して、セルを挿入した箇所に4400と正しい値を入力します。


4400と正しい値を入力してもなお、右側の引き算の数式はまだズレたままになっているので0になりません。どういう事かというと、左右隣り合ったセルでの引き算ではなく、斜め隣のセルの引き算になっているのです。なので、例えば80枚目の列に入力されている数式をコピーして、その数式を一番下までズラッと貼り付けるなどして、斜め同士のセルの引き算の数式になってしまった部分を修正します。


引き算の結果が全て0になればOKです。次に進みます。

9.最後の仕上げと確認


最後に伝票を1枚1枚丁寧にめくりながら枚数を数えます。伝票同士が張り付いていて入力漏れをしたものが無い事などを確認します。伝票の枚数と、Excelの一番下の合計を除いた、最後に入力した行の連番の数が一致しているかどうかを確認します。一致した場合は、それで完了としてOKです。
もし張り付いている伝票があったら、それが何枚目かを数えて、前後の数値を確認しながらExcelに行を挿入して、合計値を修正します。
もしも張り付いている伝票などが特に見つからないのに、枚数が一致しないという場合は次のようにします。
まず10枚目、20枚目、30枚目など、10枚おきのキリ番で、伝票の数値とExcelの一致を確認して行きます。不一致が見つかったところで、伝票を一枚ずつ丁寧に遡って確認します。10枚以内に、貼り付いているなどして飛ばしてしまった伝票が見つかるはずです。
飛ばしてしまってった伝票が特定できたら、Excelワークシートに行を挿入して修正し、挿入後に伝票の枚数と一番下の合計を除いた、最後に入力した行の連番の数が一致したら、合計金額を確認します。
因みに、伝票を飛ばしてしまった場合だけでなく、ダブって入力した場合も伝票の枚数と最後に入力した行の連番の数が理屈上ズレる事になりますが、実際上そういう場合は無いと思って良いです。
その理由は次のとおりです。
まず、1回目と2回目のどちらかでダブって入力した場合は、1回目と2回めで行数がズレて目立つので、気が付かないわけが無いからです。
次に、1回目と2回目とで、それぞれ1回ずつ、別々の箇所でダブって入力した場合です。その場合、総行数は1回目と2回目でズレずに一致しますが、1回目でダブッた場所と2回目でダブった場所の間の部分は、引き算の結果が0にならないセルがたくさん現れてよく目立つので、それも気付かないわけがありません。
最後に、1回目と2回目とで、まったく同じ行でまったく同じ数値を入力してダブって入力した場合は、発見が特に難しいです。しかし、そんな器用な間違い方をする事は、確率的にみてまずあり得ないので、心配する必要はありません。
ただし、反対に、1回目と2回目とを同じ箇所で飛ばしてしまう事なら考えられます。例えばそれは、2枚の伝票が貼り付いてしまっている場合です。貼り付いた伝票の部分は、1回目でも2回目でもまったく同じ様に飛ばしてしまう可能性があります。だから、伝票を1枚1枚丁寧にめくりながら枚数を数える工程が必要なのです。

10.なぜ2回の入力だけで正確さに自信を持てるのか

最後に、なぜたった2回(2列)入力をしてチェックしただけで正確さに自信を持てるのか、という事です。
まず、人間の手作業である以上、絶対に正しいと言える計算はそもそもできません。
私がこの様にExcelを使った作業方法を考え出す前、職場でどういう作業方法を教わったかというと、電卓での手計算です。たぶん世間一般的にも、それが相場だろうと思います。電卓で手計算をする場合だって、この様にExcelを使って作業するのと、正確さの度合いは似たりよったりのはずです。少なくとも、「Excelでなく電卓で計算すれば完全に正確な集計が可能なのに」という事は言えない筈です。このExcelを使った方法でも、「人力でこれ以上の精度を上げる事は難しい」と一般的に言えるレベルには、十分に達していると思います。

ところで、このExcelを使った方法には、明らかに弱点と言える部分があります。それは

「1回目と2回目とで、同じ枚目の伝票を同じ数値に打ち間違えた場合」

です。この場合は、発見できない間違いになり得ます。

しかし、こうした間違いが発生する確率は天文学的に小さいと思います。私は5年間以上経理マンとして働いた経験がありますが、その間に1度もそういう事は発生しませんでした。

もしも仮にそういう事が偶然に発生してしまったとしても、人間が作業している以上、どうにもできません。これは、ほかの方法で、たとえば電卓で合計を求めるという作業したとしても、確率ゼロにする事はできず発生し得る事で、どうにもできないと思います。
実務なので、掛けれられる手間や時間も無限ではないと思います。どこかで割り切りは必要になります。そうした事情も込みで考えればなおさら考えなくて良いと思います。
なので、この方法で実務的には十分だと割り切って良いと思います。もちろん、2回ではなく3回、4回と入力の回数をふやしてチェックをすれば、精度はさらに上がる筈です。時間や手間を掛けてでも精度を上げたい、という特殊な事情があったりする場合には、有効な手法だと思いますので、そのように応用してみて下さい。

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