6Sボスフリーの実用性をトコトン引き出す
リアスプロケットには2つの方式がある
自転車のリアスプロケットには、2つの方式があります。
- ボスフリー
- カセット
の2種類です。
この2つの方式には、互換性がありません。
基本的に、ボスフリー専用のホイールにはボスフリーのスプロケットだけを装着できます。カセット専用のホイールにはカセットのスプロケットだけを装着できます。
安い自転車に付いているのは、ボスフリー方式です。
基本的にボスフリーの方が部品価格が安く、カセットのほうが上等です。
ボスフリーは種類が少ない
現在発売中のボスフリーのスプロケットは、6段か7段です。シンプルに伝えるために少々乱暴な言い方をすると、ほぼ「シマノしか作っていない」と言えるような状況です。
細かい事を言うと、海外の小さなメーカーが作っていたりはします。しかし、入手しにくく、入手できても価格が高いうえ、シマノ製ほど高品質ではありません。
そしてシマノが発売しているボスフリーのスプロケットの種類ですが、
- 6段: 1種類
- 7段: 2種類
です。
細かいことを言うと、6段のスプロケットにも、材質の異なる2種類があります。ギアの構成などは一緒で、耐腐食性を高めた素材のものが後から発売されました。実売価格はどちらも変わりませんので、実質マイナーチェンジしたようなものです。
そして、そのシマノが作っているたった1種類のボスフリーの6Sスプロケットは、現在市販されているありとあらゆる外装変速の安い自転車に搭載されています。安い自転車は、ママチャリも、キッズサイクルも、シティ車も、MTBも、クロスバイクも、ロードも、基本的には同じシマノのボスフリー6Sスプロケットを搭載しています。
裏を返せばシマノの6Sボスフリーというのはそれだけ安いという事なのですが、しかしそれほどの低価格でありながら肝心の性能がとてもしっかりしています。ちゃんと変速しますし、不良品に当たる事などまずありませんし、そう簡単に壊れません。
シマノ以外の、中国か台湾からの直輸入のパーツを実装した自転車もあるにはあるようですが、かなり稀です。
シマノの6Sボスフリーのギア構成
その、シマノのたった1種類の6Sボスフリーのギア構成は、
14-16-18-21-24-28T
です。
トータルギアレシオは(最低ギアの丁数/最高ギアの丁数)x100=200%です。
トーアルギアレシオとは、全減速比、総減速比、総合減速比とも呼ばれます。
ひとことで言えば、「変速機構がどれだけの幅広さをもっているか」を示す指標です。もう少し詳しく言うと、例えばチェーンリング(クランク側のスプロケット)にわかりやすく28Tのものを装着したとして、そのマシンで1速(一番軽いギア)の28Tに入れると、クランクを1回転したときにタイヤがちょうど1.0回転します。そのままギアを上げて行き、6速(1番速いギア)の14Tに入れたときには、ペダルを1回転したときに、タイヤが2.0回転します。その、1.0回転に対する2.0回転の比率が、200%ということです。
トータルギアレシオが大きいほど、変速の幅は大きくなります。ただし、変速の幅は大きければ大きいほど良いかというと、そうとも限りません。軽すぎるギアや重すぎるギアは、「在っても使わない無駄なギア」になってしまいます。あるいは、同じ6Sのままトータルギアレシオが大きくなると、1段シフトチェンジしたときのギャップが大きくなります。それによって、少し軽すぎるけれども、1段上げれば重すぎる、というように、ちょうどいいギア比に当たらないケースが増えたりします。
6Sでトータルギアレシオ200%というのは、ママチャリからロード(ルック車)までをカバーする安価な量産品として、絶妙な仕様なのだろうという事が伺えます。
とりあえず、安い自転車を買って、ローコストなDIYでのカスタムを愉しもうと考えている人は、この6Sでトータルギアレシオ200%という仕様のことをまず、基本として頭に入れておくと良いと思います。
シマノ6Sボスフリーを使い倒すカスタム
6Sボスフリー車のカスタムを行う場合、7Sボスフリーへの変更や脱ボスフリー/カセット化という選択肢も考えられます。そんな中で私は「フロントスプロケットの丁数を丁寧に選び、リアスプロケットは敢えて6Sボスフリーのまま行く」という選択をしました。
というのも、7Sボスフリーに変更するにせよ、カセット化をするにせよ、どのみちスプロケットの枚数を増やすことになります。すると、フレームを拡げたり、センターを調整したりと、考える事が一気に増えてしまってなかなか大掛かりになってしまうからです。
私の自転車はホームセンターで買った一番安い700Cのクロスバイクもどきです。ノーマルで48Tのクランク一体型のチェーンリングが付いていました。フロントシングルでリアスプロケットはもちろん6Sボスフリーです。そのためローギアに入れても48/28=1.714という、そんなに軽くないギヤ比でした。一方、トップギアは48/14=3.429という、なかなかのハイスピードです。幅700✕35Cという太めのタイヤだった事もあってかなり重いですし、それでも頑張ってこいだとしたらスピードがかなり出ますので街ナカでは使う機会などまずありません。
まとめると、自転車を近所の移動用として使っている私にとってはけっこう使いづらいものでした。登り坂ではう1枚軽いギアがあったらいいのに、と思う反面、トップギアはほとんど使う機会がない、という状態でした。
色々検討して、チェーンリングを6丁少ない42Tに交換しました。パーツの構造上、クランクも必然的に交換する事になりました。交換した結果、期待通り乗りやすいものになりました。
ギア比の検討をするときに使ったのはこんな表です。少し見やすくして載せました。よかったら参考にしてみてください。
チェーンリングの丁数を検討するときには、まず第一にローギア、次にトップギアのギア比で判断して決めると良いと思います。表にピンク色と水色で着色した範囲は、私の個人的な感覚ですので、あくまで参考程度に受け取ってください。
私の住まいは東京の下町エリアで、近所は全体的に平坦で坂があまりありません。日常的に通行する最も急な登り坂といえば、橋を渡る手前の部分だとか、川の土手の登り口です。それぐらいの勾配だと、カスタム後のギア比1.5のローギアに入れて登れば、まずそんなに苦しくなるような事なく登り切れます。しかし、もっと違うエリアまで出かけたときには、苦しくなるような登り坂にも出会う事があるかも知れません。
トップギアに関しては、結果的にノーマルの5速と同じギア比にまで落ちる事になりました。しかしそれでも遅すぎるとは感じません。たまには1日に50kmぐらいのサイクリングに出かける日もありますが、不自由は感じません。トップギアまで入れるまでもなく、4速あたりでもうママチャリが追いついて来れないぐらいのスピードが出ます。これだけの速さがあれば私にとっては十分です。
私は基本的に車道を走るようにしていますが、日常的に移動する範囲内には路地や自転車歩行者道も多いです。ですからカスタム後の今でもなお、トップギアに入れる機会などめったにありません。なので全体的にもう少し低速寄りになるよう、チェーンリングは40Tか38Tぐらいにしておいたら、より急な上り勾配に対応しやすいローギアにできて良かったのかも知れません。
ひとつ言える事は、私がふだん近所を走るための自転車は、7Sに改造するまでの事はなく、やはり6Sボスフリーのままで十分だったという事です。