オフピーク定期券CMのダメ部長感
JR東日本のオフピーク定期券のCMがスタートしました。
これがそのCMです。
違和感の正体は、部長のダメ上司感です。
「ありでしょ、うちの会社、時差通勤、OKだもん」
「だったらありでしょ」
という台詞です。つまりウラを取らずに、推測だけでやっている、という事なのでしょう。そんぐらいのこと確認してからにしとけよ、と思わずイラッとしてしまいます。キライですねえ、こういう上司は。最後に顔を正面に向けずに横目で部下の同意を確かめる感じなんか、お芝居ですが、人間こうなっちゃったら終わりだ、と思います。
この様子を見る限り、ふだんの仕事でも、確実に「OKだよ」とか「業務命令としてやってください」とか言えない事を、「多分OKでしょ」「OKな筈でしょ」と言いながら、後ろ盾になる事は避けながら、それでも自分が持っていきたい方向の仕事を部下にやらせるように曖昧な感じで圧だけかけたり促したりしているのかな、なんて事まで想像してしまいます。現実の会社にはよく居るんですよね。珍しい話ではありません。
この部長の台詞がもしも「俺はアリだと思ってる」「俺はこれで行く事にしたよ」なら、少なくとも人間性の部分でキライになる事はありません。とはいえ、部長ぐらい職位の高いポジションだったら、「会社側の人間」として堂々と会社の公式な見解を部下に伝えられる人で居て欲しいのが本音です。
そして単に雰囲気だけでの話ではありません。コンプラ的にマズそうな、きな臭さも漂っています。この部長の挙動だと、通勤手当はふつうの定期券代の金額を支給されていて、差額を浮かしているようにしか見えません。
こっそり自分ひとりだけが浮かすならまだ分からない事もありません。「ちょっと都合があって、これからは、僕は毎日出勤が遅めになるよ」みたいな事を言えば良いだけです。もちろん、そんなストーリーではCM向きの台本にはなりません。だからといってこのCMの台本もどうなんでしょう。佐野勇斗さん演じる若手社員がまんまと「ですよね」と巻き込まれて同調してしまっている展開に、「部長も部長なら部下も部下だな」とツッコミたくなってしまいます。
支給した手当をどう使おうが気にしない会社もあるかも知れませんが、そういう会社ばかりではないでしょう。特に日本は、こういうお金絡みのセコさを嫌うカルチャーを持つ会社のほうがむしろ多数派な気がします。日本の会社員全体に向けて発信するCMならば、少なくとも自信をもってシロと言えるものではなく、グレーな雰囲気が充満しまくっています。
オフピーク定期券はふつうの通勤定期券に比べて、当初10%割安だったものの、思ったほど利用が伸びなかったのか、10月からは15%割安な新価格になるという事です。
そのような状況で、まるで「オフピーク定期券で通勤手当を浮かすのアリでしょ?」といわんばかりに利用者をそそのかす内容です。うっかり会社のオフィスを舞台にしたCMにしてしまったばかりに、その場所をついついJR東日本のオフィスに重ねて観てしまいます。
自社の思惑のためにはなりふり構わないというJR東日本のモラルやエシックが、こんなところでついポロッと漏れ出てしまったかのようです。