通関士試験に少しだけラクに合格するには(その4) ─電卓のテクニックを習得する─

電卓での計算作業がよりスピーディーに、より正確にできるようになると、通関士試験の午後の通関実務の科目では確実に有利だ。

受験中の受験者の行動をよく分析してみると、 電卓を叩いて、その計算結果を読んで、書き写して、という、どちらかというと肉体的に行う作業側の部分と、問題文の指示内容や計算の条件を理解したり、適用すべきルールを思い出したりするという、どちらかというと頭脳で行う思考側の部分とに分解できる。

これらのうち、作業側の部分に関しては、意外にもあまり注目される事なくスルーされてしまいがちだ。しかし試験の実戦では、この部分を上達する事にも確実に有効性がある。作業をより少ないミスで行えるようになれば、まずは減点される可能性をダイレクトに減らせる。より速く行えるようになれば、作業にかかる時間を短縮し、考えたり見直しをしたりする時間が捻出できる。精神的なものもふくめて省力化できると、よりよいコンディションで受験する事ができる。
では、どうすればその作業の部分を上達できるのだろうか。そんなに難しい事をしなくても、準備できる事がある。この記事で特に取り上げたいのは、電卓の操作に関わる次の3つのスキルだ。これらを身につけるだけで、ずいぶんと効果がある。
  1. 鉛筆(シャープペン)を持ったまま電卓をブラインドタッチできるスキル
  2. 電卓の定数計算の機能をつかいこなすスキル
  3. 電卓のメモリーキーをつかいこなすスキル

それぞれどういう事なのか、順に見て行こう。

 1.鉛筆(シャープペン)を持ったまま電卓をブラインドタッチできるスキル


これは、電卓を使って計算するあいだじゅう、ずっと役に立つスキルだ。パソコンでプラインドタッチというのはよく知られている話だが、ブラインドタッチは電卓にもある。そしてさらに、それをペンを持ったままの状態で行う。普通にペンを持ったままだと電卓を叩きづらい、という人は、下のイラストみたいに普段文字を書く状態からペンをちょっとだけ動かして中指と薬指の間に持ってきてもいい。

鉛筆を少しずらした持ち方の図


これができると、電卓を操作するたびにわざわざペンを置いたり拾ったりする時間のロスがなくせる。タイピングのときに手元を見ずに、問題用紙に目線を向けたままで済むので、問題文と電卓との間で目線を行ったり来たりさせる回数を激減できる。

基本的に右手ばかりを使うので、左手が空くわけだ。その左手は、問題用紙の上に置いて、どこの部分を読んでいるのかを指差すというクセをつけておく。自分で指差している部分なので、右手の計算作業が終わって、電卓の液晶パネルで計算結果の数値を見てから再び問題用紙に目線を戻すときに、あれ、今どこの部分を読んでいたんだっけ、と探して時間をロスすることなく、すぐに続きに戻る事ができる。

これにより、まず計算そのものが確実にスピードアップする。そして、目の疲れが減る。作業のもどかしさから来るイライラを減らせる。さらには、電卓の操作に対する苦手意識を持っている人は、苦手意識も雲散霧消してどんよりとしたストレスも解消できる。

別の方法として、ふだん右手でペンを持つ人が、左手で電卓のブラインドタッチを行う、という方法もある。税理士や公認会計士の試験なんかでは、けっこうやっている人が多いらしい。しかし、私はあえてペンを右手でもったまま右手でブラインドタッチする方法をメインでおすすめしている。その理由は、

  • 右利きの人が左手でブラインドタッチを身につけるのはさすがに時間を要する
  • 電卓のキーの配列は人間工学的に右手に合わせたデザインだと言われている
  • テンキーが右側に固定されたタイプのパソコンのキーボードでも同じ技術が使える
  • 時代の流れとして電卓を早く打つという人間技の価値がどんどん無くなりかけている
こんなものである。ただ、左手で電卓を扱うのがダメだとまでは思わない。実際に多くのベテランの人はそうしているのだから、やっぱり良さはあるのだと思う。でも、そんなアクロバットみたいな技を身につけるには、それなりに時間をかけて練習する事が必要だ。人間が電卓を手打ちする事の需要はどんどん減り続けていくという世の中の動きについても考慮しながら、あまり近視眼的なり過ぎずに落ち着いて判断した方が良いと思う。

因みに、右手でブラインドタッチする場合はパソコンのブラインドタッチと同様の発想で、指の1本ずつに守備範囲を割り当てて行うのが一般的だ。下の図の様に、人差し指~薬指はそれぞれ指1本につき縦1列ずつを担当し、親指は0と00を担当する。



2.電卓の定数計算の機能をつかいこなすスキル


これは、一定の値の数値(項)を次々と異なる値と演算するときに使う。
N✕A
N✕B
N✕C
N✕D
という様に、Nという定まった数値をAやBやC…といった異なった数値に次々と掛けた計算結果を求めたい、みたいな計算がそれにあたる。いつも2問目などで複数の項目に対し一定の為替レートや一定の原価率を掛ける場面があったりするが、そういう計算をラクに、しかも時間短縮する事ができる。日本製の電卓には、実はこういう計算を行うための機能が付いている。
例えばカシオ製の電卓の場合は、演算記号のキーを2回連続して叩くとそういう計算を行うモードに入る。仮に「107✕✕6=」と入力してみよう。「✕✕」と、掛け算の記号が2回連続しているのは、間違いでなくわざとだ。するとまずその計算結果はふつうに「642」と表示される。その後、「7=」と入力するだけで、「107✕7=」と入力したときと同じ計算結果が得られる。これは✕を2回押したことによる(因みに計算結果は「749」である)。
これをマスターすれば、同じ計算をする際に、キーを叩く回数がより少なくて済むのだ。そして作業のストレスも減る。ぜひ身につけておこう。

3. 電卓のメモリーキーをつかいこなすスキル


これは、ひとつの計算を行ったあと、その計算結果に対して別の計算結果を足したり引いたりするという、複合的な計算結果を求める時に使う。

例えば、カシオの計算機の場合、次のように計算する。
まず、20000円✕税率8%を計算するとしよう。
「20000 × 8 %」と叩くと、「1600」という計算結果が表示される。
そしてここで、「M+」キーを押す。 


次に、60000円✕税率6%を計算するとしよう。

「60000 ✕ 6 %」 と叩くと、「3600」という計算結果が表示される。
そしてここでまた「M+」キーを押す。 
最後に、「MR」を押すと、「5200」と表示される。この「5200」とは、「1600+3600」なのだ。

つまり、まとめると、

   20000✕8%=1600
(+)  60000✕6%=3600
───────────────
     合計   5200

という計算を、いちいち紙と鉛筆でメモを取らずにできる。
このスキルも、結構省力化と時短につながるので、ぜひ身につけておく事をおすすめする。

これらのスキルに関する読みやすい本が出版されている


以上の説明だけだとちょっとよく分からないとか、あるいはバッて読みづらそうでまともに読む気すら起こらない、 という人も多いと思う。実は、そういう人にも読みやすい、やさしくてかわいい本が出版されているのだ。
上に書いたような内容が、かわいいイラストつきでわかりやすく書いてある。親切にやさしく書いてあって読みやすく、これならば無理なくスキルを習得できる。通関士の試験勉強のなかで、ちょっとした気分転換にもなるのではないだろうか。

パブロフくんと学ぶ電卓使いこなしBOOKの表紙
パブロフくんと学ぶ電卓使いこなしBOOK

ここまで、通関士試験に少しだけラクに合格するには、という事で3回のシリーズで説明してきたが、どれも、受験生にとってそんなに大きな負担になるようなものではなかったのではないだろうか。その割には効果が大きいと思う。全部の効果を合わせたら、通関士試験にちょっとばかりラクして合格できるというのも大げさではないと実感できるだろうと思うので、本気で合格したいと考えている人にはおすすめしたい。

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